「都庁って、深夜まで灯りがついているし、やっぱり激務なの?」
「都庁といっても公務員なんだから、17時になったら帰れるでしょ?」
「都庁ではサービス残業が蔓延してるって聞いたけど、本当?」
都庁を目指す方の多くは、都庁の残業実態について興味津々だと思いますし、上のような疑問を持っている方も非常に多いでしょう。上の質問はすべて、実際に筆者が外部の方から受けたことのある質問の一例で、筆者自身も入都前は同じ疑問を持っていました。
今回は、そんな都庁の残業実態について、様々な面から詳細に解説していきます。
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1 はじめに
冒頭で述べたとおり、都庁を目指す方にとって都庁の残業実態は最も大きな関心事の一つだと思います。そして、都庁の残業実態については様々なイメージがされています。
「都庁の仕事量なんて楽勝だろ」という声から「都庁は激務って聞いているけど」など、筆者自身様々な声を聞いていますが、どちらかというと「都庁は忙しそう」というイメージを持たれている方の割合の方が多い印象を受けます。
実際に、「都庁と特別区のどちらを受けようか?」と悩む受験生の中には、「忙しくなさそうだから・残業が少なさそうだから特別区にした」という方も多いです。某予備校に通っていた筆者の友人は、その予備校で、「都庁はたまに暇な時期があって、特別区はたまに忙しい時期がある」と教えられたそうです(笑)
では、世間のこの印象は事実なのでしょうか?まずは都庁の平均残業時間から解説していきます。
2 都庁の平均残業時間
都庁の平均残業時間は、内部職員向けに総務局が毎月公表しています。この情報は都庁外部には公表されていないため、少しぼやかした形での解説になりますが、都庁本庁部署(出先機関は除く)における個人職員の一月平均残業時間は、次のとおりです。
- 月20~30時間
※月によって平均残業時間は大きく異なります(役所は大体年度当初と年度末が忙しいです)。
一方、出先機関を含めた都庁全部署における個人職員の一月の平均残業時間は、次のとおりです。
- 月10~15時間
このようにデータ自体は存在するのですが、残業をしてもすべてを申請しない、いわゆるサービス残業が蔓延している部署もあるため、「これは本当か?」と感じている職員が多いです。
一応公式なデータなのですが、部署によって残業の実態は本当にバラバラなので、筆者自身は、上記数値自体にはあまり意味がないと考えています。感覚としては、本庁部署において平均である月20~30時間程度の残業をしている職員はそれほど多くなく、業務量に余裕のある職員は月0~20時間程度、忙し目の職員は月40時間以上の残業をしている印象です。
それらを平均すると、月20~30時間という数値が出てくるのでしょう。
3 残業時間の実態
それでは、都庁において5部署で働いたことのある筆者、そして筆者の上司・先輩・同期・後輩と話をした結果を踏まえて、都庁における残業時間の実態について解説していきます。勤務時間がB班(9:00~17:45)の職員をモデルに解説をします。
※なお、ここではあくまで残業時間に絞ったイメージの解説となりますので、実際の職務の大変さとは異なります。あらかじめご了承下さい。例えば、主税局の都税事務所で税金滞納者の徴収を担当している係は、残業時間としては極めて少ない部署に該当しますが、職務の大変さ・受けるストレスについては、他部署を大きく凌駕することになります。
①月0~5時間(レベル1)
レベル1の職場は、都庁内部において、「残業のない職場」という印象を持たれています。誤解を恐れずに言えば、楽な職場、と認識されています。
仕事量としては、基本的には毎日定時退庁。稀に突発的な仕事が入り、その際に20時程度まで残業する、といったイメージです。各局の出先事務所に多い形態ですが、本庁部門でも業務にゆとりがある場合や、業務の閑散期の場合には、レベル1の業務量になることもあります。
都庁では残業をする際には、「〇〇のため△△時間残業をします」旨を書類に記載して上司の決裁を取るのですが、残業をしなさ過ぎてこの書類の書き方を忘れる人も多いです(笑)
完全に筆者の感覚ですが、出先事務所も含めた都庁全体でみると、およそ4~5割程度の職員がレベル1に該当すると思います。都庁職員の半分弱は、ほとんど残業をしていません。
なお、上で述べたとおり、残業時間の多さと職務の大変さは必ずしも一致しないので、残業が少ない=楽な職場、と言い切ることはできません。
②月5~30時間(レベル2)
レベル2の職場は、都庁内部において、「普通の職場」という認識です。(普通って何?という突っ込みは心の中で行ってください(笑))
仕事量としては、定時退庁の日が多いが、週に1~2日程度は20時程度まで残業する日がある、といったイメージです。もちろん、きっちり毎週1~2日残業するというわけではなく、平均するとそれぐらいの業務量になるという感じです。業務が落ち着いている週は毎日定時で帰れますが、反対に業務が立て込んでいる時期は毎日20時程度まで残ることもあります。
各局の出先事務所の中では、レベル2は忙しいレベルに分類されることが多いです。本庁においては、楽でもないが忙しくもない、ザ・普通の職場、といった感じです。
出先事務所も含めた都庁全体でみると、およそ2~3割程度の職員がレベル2に該当すると思います。
③月30~60時間(レベル3)
レベル3の職場は、都庁内部において、「忙しい職場」という認識がされています。もっとも、レベル5の職員に聞いたら、「月30~60時間なんて天国じゃないか!」と怒られることが確実なため、あくまでも評価する人によりますが(笑)
仕事量としては、基本的に毎日20~21時程度まで残業をして、週1回の定時退庁日だけ定時で帰る、というイメージです。より忙しい場合は、定時退庁日にも定時で帰れません。
都庁は土日祝を除くと、平均で月20日程度の勤務日がありますので、週4日(月16日)×3時間の残業をすると、月に約48時間残業をすることになります。年間に換算すると残業時間が500時間を超えることもあり、都庁の中では忙しい職場認定されることは間違いありません。
出先事務所でこのレベルの職場はかなり少なくなってきますが、本庁ではザラにあります。都庁全体でみると、およそ1~2割程度の職員がレベル3に該当すると思います。
④月60~100時間(レベル4)
レベル4の職場は、都庁内部において、「激務の職場」という認識がされています。「月60時間程度で激務なのか?」という突っ込みも入りそうですが、月60時間は、都庁内部では激務と認識する職員が多いです。
仕事量としては、基本的に毎日22時程度まで残業して、大事な飲み会の日は泣く泣く定時で上がる、仕事が終わらない場合はその分土日のどちらか出勤する、といった感じです。
どこに住んでいるか?ということも大きいですが、出勤に1時間程度かかるならば、平日は間違いなく自宅と都庁の往復だけの生活になると思います。このレベルの残業時間が続くのは、肉体的にだけでなく精神的にもかなりしんどいです。
しかし、出世に有利な部門はレベル4以上であることが多々ありますので、偉くなるための試練だと思って耐え忍んでいる職員も多いです。ちなみに、レベル4程度であれば、希望しなくても普通に配属される可能性があるので、覚悟はしておいた方が良いかもしれません。
とはいっても、都庁全体でみてもレベル4に該当する職員は全体の1割未満になると思います。
⑤月100~時間程度の職場(レベル5)
栄えあるレベル5の職場は、都庁内部において、「行ってはいけない職場」という認識がされています。慢性的に月100時間を超える職場はほんの一握りですが、レベル3~4の職場においても、時期によっては一時的にレベル5になることもあります。
仕事量としては、基本的に毎日終電、場合によってはタクシー帰り、土日のどちらか又はいずれも出勤、といった感じです。
このレベルの職場になってしまうと、途中でダウンしてしまう職員も多いです。しかし、人事や予算、東京オリパラ関連など中枢中の中枢の部門である場合が多いので、レベル5の職場にあえて行きたがる職員も存在しています。筆者の同期は、「ランナーズハイになって楽しかった」と言っていました(笑)
もっともこのレベルで忙しい職場は、都庁全体で見ても数%程度です。
4 激務になりやすい職場とは?
このように、都庁において激務の職場(レベル4~5)は、全体の中で見ると多くても1割程度しか存在しません。では、どのような職場が激務になりやすいでしょうか?
実は、激務になる職場は局によって大きく異なるため、一概に言うことはできません。しかし、次の部署はどこの局でも共通して、激務になりやすい特性を持っています。
- 人事担当部署
- 予算担当部署
この2つの部署の共通している部分は、職員一人一人の割り当て業務が多いことにあります。また、仕事の進め方について職員に裁量が与えられている場合が多いです。仕事好きな人は思う存分楽しむことができると思います(笑)
なお、この2つの部署はどの局においても、いわゆる「花形部署」として一目置かれています 。
詳しくは、都庁の花形部署についてにて解説しております。
それ以外の部署の忙しさについては、本当に局によりバラバラです。他局の人から見たら、「〇〇局の□□部って絶対に忙しそう!」と思われているのに、当の職員は、「実はほとんど定時で帰っているんだけど」というケースも少なくありません。反対に、「△△課って暇そうだよね」と思われているのに、実際は激務という場合もあります。
「出先事務所配属になったから遊びまくる」と豪語していた筆者の同期は、その後毎月80時間程度の残業をすることになりました(笑)
出先事務所の中にも、ごく稀にこのような地獄の職場が存在しています。
忙しい部署がどうかは、実際にその部署にいる職員の話を聞いてみなければ、内部職員でも判断することが極めて難しいのです。
5 残業代は貰えるのか?
残業時間とともに多くの人が気になるのは、「残業第は貰えるのか?」「サービス残業をしなければいけないのか?」という点ではないでしょうか。筆者の友人の国家公務員は、「残業はほとんどつけられず、計算したらコンビニのバイトよりも時給が安い」と嘆いていました。
では、都庁においてはどうでしょうか?
結論を先に述べると、残業代が満額貰えない局・部署もある、となります。
まずは前提ですが、残業した場合に残業代を支払うのは組織側の義務であり、残業代を支払わないのは違法です。しかし、残念ながら残業代を支払わない局・部署が存在しているのも事実です。
もっとも、「残業代を支払わない」という表現は正しくなく、正確には、「残業の申請をさせない」という運用が取られている場合が多いです。「残業の申請をしていないのだから、〇〇さんは残業していないだろう。本当は残業していた?書類に残っていないのだからそんなことは知らないよ。」こういう理屈です。
職場の無言の圧で、残業の申請をさせないのです。極めて公務員的だと思います。
とは言っても、残業を実態どおりに申請でき、申請した分の満額が貰える職場も勿論あります。内部告発をするつもりはないので、どの局のどの部署が残業代を支払っていないか?をここで述べることはできませんが、残業代を満額もらえる職場と、残業代の大半がカットされてしまう職場の差は激しいです。
都庁職員の中には、「残業代が満額貰えるか否か」を異動希望を出す際に重視する人もいます。こちらも、実際にその局・部署に在籍する職員の話を聞いて判断するしかありません。
ただ、一つだけ述べるならば、「ソフト系の局(第一庁舎の局)に比べ、ハード系の局(第二庁舎の局)は残業代が付きやすい」と都庁内では一般的に言われていて、これは当たっていると思います。これ以上は言えません(笑)
6 まとめ
今回は、都庁の残業の実態について解説してきました。簡単にまとめると、次のとおりです。
- 本庁の月平均残業時間は20~30時間
- 出先を含めると、月10~15時間
- 月30時間以内の部署が約7割
- 人事、予算を担当している部署はどの局でも激務
- 残業代は満額貰えない局・部署もある
若手職員(特に男性)は、どこかのタイミングで一度は忙しい部署を経験すると覚悟しておいた方が良いでしょう。筆者の周りをみても、3~4部署経験して、すべて残業が少ない部署だったという人はかなり少ないです。
なお、忙しい部署の方が概して勤務評定が高くなる傾向があるため、出世を目指すならば忙しい部署にいた方が有利です。ただし、レベル4・レベル5の職場では忙しすぎて主任試験・管理職試験の勉強をする時間が取れないため、忙しすぎるのも考え物です。
筆者自身の経験では、最も忙しかった部署のレベルは4でしたが、年度末に一時的にレベル5に達したことがありました。肉体的にかなり厳しかったですが、テンションが高くなり意外と走り抜けられるものでした(笑)
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