都庁職員の学歴と出世

「都庁の試験って、難関大学じゃないと受からないでしょ?」「万が一受かっても、無名大学出身者じゃ出世できないでしょ?」という疑問を持たれる方も多いと思います。

 一方、「仕事ができるかと学歴って、関係なくない?」と考える方も多いでしょう。

 今回は、都庁職員と学歴について、採用試験の合格率・仕事の優秀さや出世の現実等、色々な観点から解説していきます。

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1 はじめに  

 公務員試験は一般的に難関試験と言われていますが、その中でも都庁に入るのは難しいという印象を持たれている方も多いと思います。

 実際は、公務員試験の中でも、特に地方上級の中で比べると、都庁に入る難易度は決して高くありません。しかし、都庁外の人と話していると、実態以上に都庁受験が過大評価されていると感じることが多々あります。そもそもの募集人数が少ない地方の市役所・町役場に入る方が数百倍難しいのですが…。

 都庁の職員でも、「地元の市役所・町役場には落ちた」という方が大勢いらっしゃいます。

 そんな都庁ですが、どのような学歴の人が実際に試験に合格して入都しているのでしょうか。また、出世をするには、難関大学出身でないと難しいのでしょうか。

 今回は、都庁外部からは知りえない都庁のリアルな実態を、筆者の実体験を元に解説していきますので、お付き合いいただけると幸いです。

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2 都庁採用試験と学歴  

 最初に重要な事実を述べておきます。都庁の採用試験に学歴は一切考慮されません。巷で都市伝説のように噂されている学歴フィルターも一切存在しません。これは断言できます。

 筆記試験の際には学歴を記す欄はありませんし、面接試験の際にも、出身大学がわかるような事項を記載すること・面接で発言することは禁止されています。筆記試験で好成績を取り、面接試験で面接官に良い印象を与えることができれば、どの大学を卒業していようが、はたまた大学を中退していようが高卒であろうが、全く関係なく都庁に入都することができます。

 実際に、最終学歴が大学中退という職員も数多くいます。受験に当たって制限があるのは、年齢だけです

 そうは言っても、「実際どの大学出身者が多いの?」と気にされる方も非常に多いと思いますので、解説をしていきます。

2-1 高学歴とは?  

 本来、高学歴とは「大学卒業者」を意味します。しかし、そんな辞書的な意味を持ち出しても一切の興味を持たれないと思います(笑)

 まずは、世間一般で言われる高学歴、すなわち、「どの大学を出ていると高学歴なのか?」について確認しておきましょう。

 「どの大学を出ていると高学歴なのか?」は、人によって判断基準が大きく異なるので、筆者が言い切ることはできません。しかし、世間の認識としては、おおよそ次のあたりが高学歴と認識されているのではないでしょうか。

  • 東大・京大など旧帝国大学
  • 一橋大・東工大・神戸大、その他国公立大学
  • 早稲田・慶応・上智(技術職は+東京理科大)
  • 明治・青山学院・立教・中央・法政・学習院・関西大学・関西学院・同志社・立命館

 大学入試ブログではないので、どの大学・学部の偏差値が高い?という点には深入りするつもりは全くありませんし、「〇〇大学がなぜ入っていない?」「△△大学は高学歴じゃないだろ!」というご批判は心の中で行っていただけると幸いです(笑)

 上に挙げた大学は、一般的に世間から高学歴と認識されている大学だと思いますし、そこについてそれほど大きな認識のズレもないでしょう。

 そして都庁に約10年間勤めた筆者が出会った事務職員の学歴をリストアップしてみると、なんと、9割以上が上記大学のいずれかの出身です。そういった意味では、都庁に入都する人は、世間でいうところの高学歴であることは間違いないのです。

2-2 大学出身者数ランキング

 それでは、都庁職員の出身大学ランキングを紹介していきます。筆者が実際に出会った職員と、都庁内で人づてに聞いた話(〇〇部長は△△大学出身らしいよ、等)を元にしているため、データは完全に筆者のオリジナルです。

 ただし、本庁・出先機関を含め、150人以上のデータであるため、そこそこ信憑性はあると思います。

1位 早稲田  

 出身大学単独1位は早稲田です。ダントツの一位です。本庁・出先機関を問わず、どこの部署に行っても必ず早稲田出身者がいます。学部としては、政治経済学部や法学部だけではなく、幅広い学部から人が来ている印象です。また、早稲田の大学院卒(1類A枠)も非常に多いです。筆者の体感では、職員のおよそ4~5人に1人は早稲田出身者です。同期数人でランチをすると、早稲田出身者が必ず1人はいる感じです。同じ出先事務所に配属された同期が、実は大学の先輩・後輩の関係である場合も稀にあり、非常に気まずい空気が流れます(笑)

2位 中央  

 単独2位は中央です。早稲田よりは大分少ないですが、単独で2位となることは確実です。学部別では、特に法学部出身者が多いです。中央は、大学として公務員試験へのサポート体制が非常に厚いため、公務員予備校に行かずに都庁を受験することが可能です。元から司法試験等の難関資格試験を目指す学生が多く、それに対するサポート体制も非常に充実していますので、民間就職よりも公務員や資格試験に流れる学生が多いのでしょう。中央出身者が都庁に多い理由は納得できます。

3位群 東大・慶應・明治  

 中央から人数を大分減らし、東大・慶應・明治が3位群になります。この3大学の中では、人数の差はそれほどないように感じます。東大出身者はそこそこ多いですが、同期が東大出身とわかると、「〇〇って東大なんだって!」と話題になるぐらいには珍しい存在です。筆者の最初の配属先の同期では会えませんでした。

 続いて、慶應です。早稲田出身が非常に多いのに対し、慶應生は大学の人数の割合からすると多くはありません。慶應は国家公務員の合格者数も少ないので、大学として、公務員人気があまりないようです。

 そして明治です。大学の学生数自体は中央よりも多いですが、都庁の入都人数で比較すると中央の方が確実に多いです。

4位群 青山・立教・千葉大・横浜国立大学・都立大(首都大)  

 続いて、青山・立教・千葉大・横浜国立大学・都立大(首都大)が4位群になります。と言っても、3位群とそれほど大きな差があるわけではありません。4位群の中では、出身者数にあまり差はないように感じます。青山・立教は中央・明治に比べると明確に少ないですが、そこそこの数の職員が在籍しています。

 また、千葉大・横浜国立大学・都立大(首都大)は、いずれも首都圏の国公立大学なので、都庁を志望しやすい状況にあるのかもしれません。都庁の採用試験は一般教養で幅広い知識が問われるため、大学受験時に幅広い範囲を勉強している国公立大学出身者が有利になります。

5位群 旧帝国大学・一橋・その他国公立大学・上智・法政・学習院  

 そして、5位群の大学が続きます。5位群の大学出身者には、たまにお目にかかる、といった感じです。4位群までは比較的多くの職員がいるので、4位群と5位群の間には一線あります。

2-3 なぜ高学歴が多いのか?

 このように、採用試験を突破して実際に入都する人は、一般的には高学歴といわれる大学出身者であることがほとんどです。そうすると、「結局、難関大学に行ってないと受からないんでしょ?」という疑問を持たれる方も多いと思います。

 しかし、難関大学に通っていなくても、都庁の合格は十分に可能です

 筆記試験の詳細については、改めて別の記事で解説をしますが、例えば専門記述試験は、難関大学に通っているから有利というようなことはありません。ほとんどの受験生は何らかの形で予備校を利用しているため、憲法・行政法・政治学などの専門試験を勉強する際には、予備校のテキスト・ノウハウを利用しています。これは、教養論文についても同じです。

 つまり、実際に採用試験に向けて勉強するに当たっては、どこの大学に通っているかはあまり関係がないのです。

 予備校のテキスト・ノウハウは大変効率的に出来ているため、都庁受験で必要な専門科目を大学で一切履修していない文学部や社会学部出身者等でも、問題なく都庁試験を突破できるのです。では、なぜ高学歴の学生が多いのでしょうか?

 これは筆者の想像になってしまいますが、次の2点なのではないかと考えています。

  1. 難関大学に通っている学生は、受験勉強をすることに慣れている
  2. そもそも難関大学に通っていない学生は、都庁を目指そうと思わない

 これについて、簡単に解説します。

 都庁の試験は、効率的に正しい方法で勉強をすれば、本当に誰もが突破できるレベルなのですが、そうは言ってもかなりの時間を費やす必要があります。人によっては、1~2年の間勉強を継続する必要があるでしょう。そして、いざ公務員試験の勉強を始めてみたけれど、辛くて勉強をやめてしまったという人が多いのも事実です。

 その点難関大学に通っている学生は、大学受験の際にある程度まとまった時間の勉強をしてきている場合が多いため、都庁受験のための勉強量に耐えられる、といったことが原因の一つだと思います。

 そして、筆者としてはむしろこちらの原因が大きいと考えていますが、「難関大学に通っていないと、そもそも都庁を受けようと思わない場合が多い」という事実があります。

 筆者の同期で上記の大学以外の出身者がいますが、学生時代に都庁を目指そうとしたところ、「都庁なんて受かるわけないからやめといたら?」と友人皆に止められたそうです。結局その同期は、周囲の反対を押し切り予備校に通って真面目に勉強したところ、入都試験は平均順位より上で合格し、現在は本庁で活躍しています。 本人は、当時を次のように振り返っていました。

 「周りから絶対無理と言われていたけど、いざ勉強を始めてみたら、絶対に無理という感じはしなかった。周りの人は都庁の試験科目や試験問題さえ知らずに、イメージだけで無理だと言っていたと思う。周りの意見を聞かないで良かった。」

 あくまで個人の感想ですが、「なるほど」と感心した記憶があります。

 イメージだけで都庁は難関だと判断している人が本当に多いので、少しでも都庁に興味を持ったら、予備校のお試し講座を受講してみるなど、周囲を無視して行動に移されることを強くお薦めします。もっとも、実際に何か月か勉強をしてみて、「これは絶対にムリだ」と感じたら、諦めてもよいかもしれません(笑)

 独学か予備校に通うかで迷ったら、都庁試験の勉強法(独学か予備校か)の記事を参照して下さい。

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3 学歴と仕事能力の関係

 これまで見てきたとおり、都庁には世間でいう高学歴の職員が多いことは事実です。

 では、仕事ができるか否か、と高学歴か否か、には相関関係があるのでしょうか?

 結論を先に述べると、学歴と仕事能力については、ほとんど相関性がありません。例えば、早慶出身者とGMARCH出身者がいた場合、「早慶出身者の方が優秀な職員が多いのでは?」と感じる人が多いと思います。

 しかし、都庁であらゆる年代の職員を見てきた筆者の経験からすると、早慶出身者とGMARCH出身者の間に優劣は全くありません。高学歴職員でも全く使い物にならない人もいますし、上に挙げた高学歴ではない大学出身者で、めちゃめちゃ優秀な職員も多いです。

 そして、高学歴職員は相対的に優秀な割合が高い、とも特にいえません。優秀か否かは、その個々人により大きく異なるため、出身大学は本当に関係ないように感じました。

 しかし、これを言うと学歴偏重との批判もあるかもしれませんが、東大・京大出身者だけは、優秀な職員の割合が明らかに高いと感じました。(もちろん、東大出身者でも全然仕事のできない職員もいましたが。)

 これは、東大・京大出身者は、超難関入試を突破するために効率よく勉強し、幅広い知識を吸収する習慣が身についているため、公務員の仕事に向いているからとも考えられます。身も蓋もないことを言ってしまえば、そもそも頭の回転が速いのかもしれません(笑)

 しかし、そういった一部の優秀者を除けば、学歴と仕事能力の間に相関性はありません。

※公務員の仕事に求められる能力については、別の記事で解説します。

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4 学歴と出世の現実

 都庁は、人事制度として、学歴は一切考慮しない実力主義を採用しています。そして、入都後の昇任試験も完全に実力主義で、「学歴が考慮されることはない」と明確に謳っています。

 とはいっても、それは建前であり、「本当は学歴が考慮されているのではないか?」という疑問を持つ方も多いと思います。筆者もそう思っていました。

 学歴と出世について、本当に関係はないのでしょうか?

4-1 学歴はほぼ関係ない

 結論から先にいうと、学歴と出世は「ほぼ関係ない」となります。「ほぼって何だよ?」と思われるかもしれませんが、「全く関係ない」と言い切れないのが都庁での現実です

 都庁の出世は実力主義です。これは間違いありません。別の記事で改めて解説しますが、出世するには「主任試験」と「管理職試験」という昇任試験を突破しなければなりません。もっとも、この昇任試験の評価項目に、「勤務成績」という項目があります。

 そして、この「勤務成績」が出世にあたり、ブラックボックスになっているのです。もちろん、東大出身だから、京大出身だから、といった理由で勤務成績がよくなることはありません。逆も然りです。

4-2 学歴は問わないはずなのに?

 しかし、職員の勤務成績を付けるのは、基本的にはその課の所属長である課長です。当然ながら、課長は機械ではないので、勤務成績を付ける際にバイアスが働くことがあります。

 そしてここが重要なポイントですが、所属長である課長は、所属職員の学歴を完全に把握しています。入都後は、職員一人一人に経歴書(のような物)が作成され、課長は全員分の経歴書を把握しているのですが、その経歴書に学歴がばっちりと記載されているのです。

 ちなみに、この経歴書は通常、職員本人は確認できません。学歴が一切関係ないはずの世界で、評価する人が評価される側の学歴を完全に把握していることは、個人的に凄く違和感があるところです。

 採用時点で学歴を問わない実力主義を謳っているならば、実際の職場においても、職員の学歴を知る必要は全くないはずです。仮にあったとしても、「大卒」「高卒」「専門学校卒」等の区分が分かれば十分でしょう。

 しかし、現実問題として、職場の管理職は部下の学歴(出身大学・出身高校)を一人一人すべて把握しています。つまり、「〇〇さんは東大出身なんだから、優秀なんだろうな」という先入観を持って、日ごろの業務の評価をする可能性が十分にありうる、ということです。

 本人からしたら意識的に行っているつもりはないかもしれませんが、無意識の中にある学歴フィルターを完全に遮断することは難しいと思います。筆者も、東大生を見たら「優秀なんだろうな」と思ってしまいますし(笑)

 公務員に限らずどこの組織でも同じだと思いますが、無意識のバイアスが働く可能性がある以上、学歴が出世に全く影響しないと言い切れないのが現実だと思います。もっとも、これはあくまで無意識のバイアスで、「学歴によって優秀に見えてしまう場合がある」というレベル感なので、誰が見ても仕事ができない東大卒職員の評価が高くなることはありませんのでご安心下さい(笑)

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5 まとめ

 今回は、都庁職員と学歴の関係について解説してきました。

 簡単にまとめると、次のとおりです。

  • 採用試験に学歴は一切関係ない
  • 都庁に難関大学出身者が多いのは、勉強する習慣がついているから&他の大学の人はそもそも都庁を目指さないから
  • 仕事の優秀さと学歴は関係ないが、東大・京大出身者は優秀な比率が高い
  • 学歴と出世は関係ない、とはっきり謳われている
  • しかし、上司は部下の出身大学をすべて把握している

 実力主義を徹底するならば、経歴書への学歴の記載をやめた方が余計な誤解を与えないんじゃないか?と筆者は個人的に思うのでした(笑)

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