都庁に向いていない人

 前の記事では、都庁で働くことに向いている人の特徴について解説しました。詳細はこちら

 今回は、前回とは反対の視点で、都庁で働くのに向いていない人の特徴について解説をしていきます。

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1 はじめに

 都庁(公務員)に向いていない人の特徴というと、皆さまはどのようなイメージをするでしょうか?

 ぼんやりと考えてみると、おおよそ次のようなイメージを持つ方が多いと思います。

  • 自分の得意分野を活かしたい人
  • 高収入を得たい人
  • 1年目から大きな仕事をしたい人
  • おおざっぱな人
  • 書類作成が苦手な人

 なんとなく書き出してみましたが、今回のテーマにおいては、外部の人が持つ都庁へのイメージは大体当たっています(笑)

 それでは、具体的に解説していきます。

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2 都庁に向いていない人

 実際はどのような人が都庁で働くのに向いていないでしょうか?

 前の記事と同じく、都庁で約10年勤務した筆者の経験と、現役職員の声を踏まえて、都庁に向いていない人の特徴を解説していきます。

2-1 やりたいことが明確な人

 やりたいことが明確な人は、都庁のみならず、地方公務員になることはお薦めしません。

 公務員になった場合、自分のやりたいことが実際にできる可能性は、かなり低いと言わざるを得ないからです。都庁に向いている人の中でも解説しましたが、都庁では基本的に2~3年間隔で常に部署異動があります。異動の際には職員ごとに希望を聞かれ、希望部署を申告できる方式になっていますが、この希望はあくまで参考にすぎず、ほとんどの場合希望は叶いません。

 特に、若手職員に人気の都市計画や観光振興、文化事業、環境事業等は、そもそも希望している職員が多いため倍率も高く、希望の部署に行くことは至難の業でしょう。

 筆者自身も、入都の際に観光事業に携わりたいと熱望し、面接試験や合格後の採用面談でも強くアピールしましたが、結局約10年の勤務中、一度たりとも観光事業にかすりもしませんでした(笑)

 周りの職員を見ても、都市計画をやりたくて入都したのに、結局都市計画に携わることなく課長になってしまった上司や、大学時代に環境政策を勉強したため環境局への異動を強く希望したのに、10年以上経って未だに環境局の敷居を跨げない先輩など、希望が叶わない職員がほとんどです。

 一部、希望が叶う職員もいますが、全体で見た場合、1割もいないのが実情です。

※ただし、入都後の人事異動にはコツがあります。それについては、改めて解説します。

 このように、都庁ではやりたい仕事に就ける可能性が極めて低いため、あらかじめやりたいことが明確に決まっている人は、モチベーションを保つことが非常に難しいと思います。

 なので、「どうしても都市計画をやりたい!」という方は、民間のデベロッパーを対象に就活をした方が、また、「どうしても観光事業に携わりたい!」という方は、旅行業界等を対象に就活をした方が、本人の夢は叶うでしょう。

 余談ですが、筆者が新人のとき、上司から、「一生のうちに一度、希望が叶えばラッキーだと思え。俺は叶わなかったがな。」と言われました(笑)

 なお、そもそも希望者の少ない部署を希望し続けた場合、高確率で希望は叶います

 例えば、税金の徴収担当や、水道・下水料金の滞納者への催促担当、土地収用の立ち退きの交渉など、一般的にヘビーといわれている部署です。こういった部署は、都庁内においても人気がない場合が多いので、人事異動の際に強く希望すれば叶う可能性が高いです。

 あまりいらっしゃらないかもしれませんが、せっかく公務員になったのだから、上記のような権力行政をガシガシやっていきたい!というモチベーションの方は、希望はきっと叶います(笑)

2-2 結果主義の人

 わかりやすいように極端に言ってしまえば、都庁の仕事においては、結果はそれほど重視されません。

 「公務員は結果出さなくていいから楽だよな」と、筆者自身も民間の友人に言われ続けましたが、正直なところ否定はできません。また、実際にそのようなイメージを持っている方も多いと思います。

 一方、都庁の仕事で求められるのは、結果に至るプロセスの適切性です。仮に成果を出したとしても、星の数ほどある細かい法令のどれか一つにでも引っかかった場合、それは評価されません。むしろ、仕事としては完全な失敗です。

 なので、筆者も若かりし頃、友人に対し「結果は出さなくていいけど、プロセスの適切性を守るために身を削って働いている。結果さえ出せば手段は問われない民間企業は楽でいいよね。」と負け惜しみを言ったことがあります(笑)

 上の発言はもちろん冗談で言ったものですが、プロセスの適切性を守ることに膨大な時間を費やすことは事実です。それが都民のためになるのか?という根本的な疑問は常にありましたが…。

 都庁の仕事はこのような性質がありますので、成果を出せばそれでよいという考えの方は、都庁には向いていないでしょうし、本人にとっても凄くストレスに感じると思います。

 例えば、大学の授業には一切出席しないけれど、期末試験だけ受けて高得点を取りたいと考えるタイプの人は、公務員の仕事には向いていません。期末試験の点数がどれほど良くても、毎回の授業に出席していない時点で、公務員では絶対に評価がされないからです。

 反対に、授業に毎回出席して積極的に発言をし、毎回予習・復習ができるタイプの人は、公務員の仕事には向いているといえます。この場合、期末試験の成績が悪かったとしても、そこそこの評価を得ることができます。期末試験の成績は、都庁においては評価の一つの要素に過ぎず、しかもその比率は決して高いものではないからです。

 「自分はまともに授業に出たことがない」というような方は、都庁受験について、一度立ち止まって考えなおしても良いかもしれません(笑)

 また、特に若手職員のうちは給料が横並びのため、誰が見ても優秀な職員と、仕事ができない職員の間に、給料の差がほとんどありません。優秀な職員ほどこの現実に不公平感を感じる人が多いですが、制度上の問題なのでどうしようもありません。

 そうした面からみても、「成果を出したのだからそれに応じた報酬が欲しい」と考える人には、都庁は向いていないと思います。

2-3 クリエイティブな人

 これは言わずもがなかもしれませんが、クリエイティブな人・独創性のある人は、都庁には向いていません。

 もちろん、クリエイティブ性が求められる部署もありますが、それはあくまで公務員レベルのクリエイティブ性であり、まったく新しい概念や制度を立ち上げること等は求められていません。

 新しいビジネススキームを立ち上げたい人や、芸術的なレベルが高い人にとっては、都庁で要求される公平性や公正性といった壁にぶち当たり、その才能をうまく活かすことは難しいでしょう。

 もちろん、公務員にクリエイティブ性がまったく不必要というわけではありません。政策立案をする際にも、新しい感性が求められることは当然あります。

 しかし、公務員に求められるクリエイティブ性は、「決められた枠・ルールの中で、より良い方法を追求すること」といったレベル感であり、まったく新しい概念や手法を生み出すことは求められていませんし、仮にそれを生み出そうとしても、既存の法令に阻まれて撃沈してしまいます。

 このような環境であるため、「誰もやったことのない、新しいことをやりたい!」といった心意気の強い方は、都庁には向いていないといえます。

 もっとも、そういった方は最初から公務員を目指さないでしょうから、問題はないかもしれません(笑)

2-4 「誰か」のために働きたい人

 都庁を目指す人の中には、公務員になって、他人の役に立ちたいという思いを持っている方も多いでしょう。

 それ自体は本当に大切なことですし、当然ながら都庁職員の仕事は、すべて都民のために行うものです。

 しかし、都庁に向いている人の中でも触れましたが、公務員の業務はその性質上、目の前の困っている人を助けることが非常に難しい特性を持っています。もっと厳しくいってしまえば、目の前の人のみを助けることは許されません。

 繰り返しになりますが、都庁職員の仕事は、目の前の困っている人を助けることではなく、「困っている都民みんなを助けること」、になる場合が非常に多いです。もちろん、「みんな」を助ける政策を作り、実行することで、ゆくゆくは目の前の困っている人を助けることにつながります。ですから、今この瞬間に限れば、目の前の人を助けることができない場合が多いのです。

 公務員の仕事は、そういう性質を持っています。

 都庁を目指す人は、この点を強く意識しておく必要があります。目の前の「誰か」のために働きたいと強く感じる人は、目の前の人の要望に応えられる仕事に就いた方が、自分の夢を叶えることができます。福祉保健局に配属された筆者の同期は、目の前の人の役に立ちたいという思いから、都庁を退職して民間団体でカウンセラーを目指しています。

 このように、役に立ちたい「誰か」が明確に定まっている人は、都庁には向いていないでしょう。別の業界で、より一層の活躍ができると思いますし、個人的にも、困っている人のためにそういった道を選んでもらいたいと思います。

2-5 書類作成が苦手な人

 これは皆さまのイメージどおりだと思いますが、書類作成が苦手な人は、都庁には向いていません。

 都庁の事務職には、非常に幅広い仕事があります。一日中庁舎内で事務書類を作成をする部署もあれば、毎日民間会社や団体と打ち合わせをするため、出張(外出)をする部署もあります。

 しかし、ほぼすべての部署に共通することは、何らかの書類を作成する機会が多いことです。「文書を書くのが苦手」「書類を見るとめまいがする」という方は、都庁で仕事をしていくにはストレスが溜まるでしょう。ただ、どんなに書類作成が苦手だったとしても、何か月か働いていれば強制的に慣れて、自然と書けるようになりますので、この点はあまり心配しなくてもよいです。

 その意味では、書類作成が苦手な点は、あまり気にしなくても大丈夫です。

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3 まとめ

 今回は、筆者の経験と現役職員の声を元に、都庁に向いていない人の特徴について解説をしました。

 もちろん、細かいポイントを挙げていけば、他にもいくらでもあります。

 しかし、今回解説した5つの特徴は、現役職員の生の声を踏まえた特徴であるため、なかなかリアリティがあると思います。

 このうち筆者は、結果主義ではない点が最もストレスに感じました。あまりにも守らなければならないプロセスが多く、「これ、誰のためになるの?」と疑問を感じながら仕事を進めていくことは、なかなかに辛い部分があります。

 ただこれも、ある意味では公務員の仕事の真髄ですので、ぜひ入都してこの感覚を味わってもらいたいです(笑)

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