都庁で働くメリット・デメリット

 就職先として都庁を考えている学生や、転職先として都庁を考えている社会人の方も多いと思います。しかし、実際に都庁で働くメリット・デメリットについて、細かい部分までイメージをすることは難しいのではないでしょうか。

 今回は、都庁に約10年間勤務した筆者が、実際の職員の声を踏まえて、都庁で働くメリット・デメリットについて具体的に解説していきます。

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都庁に抱くイメージ

 都庁で働くこと、公務員として働くことについて、皆さまはどのようなイメージを持っているでしょうか?

 …と聞かれても、役所で働いた経験がない方にとっては、実際に都庁で働くメリット・デメリットについて、細かい部分までイメージをすることは難しいと思います。

 筆者自身の学生時代を振り返ってみると、都庁については、「都政を動かす政策の立案に携われる」「安定している」というプラスのイメージの一方、「公務員の仕事は地味でつまらないかも」「激務なんじゃないか」というマイナスのイメージを抱いていました。非常に浅はかなイメージです(笑)

 しかし、どうしても外部の方に都庁内部の情報伝わり辛いため、学生時代の筆者と同じようなイメージしか持てない方も多いのが現実だと思います。

 また、都庁の採用イベントや採用HPなどで都庁で働くことの魅力が紹介されていますが、正直な所リクルート活動の一環に過ぎないため、良いイメージの部分しか載せていません

 本記事では、「都庁って実際はどうなの?」という多くの方が抱いている疑問にお答えするために、実際の都庁職員が語る、都庁で働くメリット・デメリットについて具体的に解説していきます。

※メリット・デメリットは実際の職員の回答から得られたものを記載しているため、読む人によっては、メリットをデメリットだと感じる方や、反対にデメリットをメリットと感じる方もいらっしゃると思います。あくまで回答結果の記載ということでご了承下さい。

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都庁で働くメリット

 筆者の上司・先輩・同期・後輩に、「都庁で働くメリットは何だと思うか?」と尋ねてみたところ、以下の結果が得られました。複数回答があったものを主に載せています。

安定している(回答者多数)

 言わずもがなですが、公務員は経済的・精神的に安定しています。これをメリットに考える職員が、年代を問わず最も多かったです。

 公務員は不祥事を起こさなければクビになることはありませんし、仮に仕事ができない職員だとしても、基本的に毎年確実に昇給していきます。

 不況になっても給料が大幅に減少することは少なく(反対に、景気が良くても給料が大幅に増えることもありませんが)、お金の面で将来的に心配をすることはあまりありません。経済的に安定しているといえます。もちろん、「今月飲み会しすぎてお金ないや」という個人レベルの話は頻繁に耳にしますが、「このままここに勤めていて、将来的に生活していけるのだろうか?」という心配をしている人は皆無でした。

 また、都庁では30代になるとマンションを買う人も増えてきますが、住宅ローンを組む際、審査に落ちた人を見たことがありません。人生プランがある程度固まっている人にとっては、都庁は理想的な職場だと考えてよいでしょう。

 そして、単に経済的に安定しているだけではなく、将来におけるお金の心配をしなくてよいという精神的な安定を得られることこそ、社会人にとって非常に大きなメリットだとも考えられます。この安定を得るために、多くの社会人が民間企業から都庁へ転職してきます。

 もちろん、将来的に公務員にもリストラが導入される可能性は否定できませんが、民間企業と比較すれば、そのリスクは非常に低いと考えられるでしょう。

 学生の方は実感しづらい話かもしれませんが、公務員の経済的・精神的安定具合は、社会人にとっては非常に魅力的な要素となっています。

転勤がない(回答者多数)

 転勤(地方転勤・海外転勤)がないことを、メリットに考える職員も多いです。

 民間会社で総合職として働いている場合、全国転勤が前提となっている会社も多いと思います。また、メーカー等で工場が地方にある場合も、地方に回される可能性も常にあります。若い間ならば特に問題はないと考える人も多いでしょうが、「結婚したのに転勤になって、新婚早々単身赴任になった」「東京でマンションを買った次の年に、九州転勤が言い渡された」、というような話も当たり前のように聞きます。筆者の大学時代の友人の中だけでも、すでに上の両方のパターンがいます(笑)

 その点都庁は、島勤務を希望しない限り、転勤がありえません。都内の住宅ならば、どこであっても通勤することは基本的に可能です。もちろん、八王子に家を買って、江戸川区の出先事務所勤務になったらさすがに辛いと思います。

 しかし、通常通勤に2時間以上かかることはまずありえませんし、通えないというレベルではないでしょう。ちなみに、局にもよりますが、職員の居住場所によって勤務場所が考慮してもらえる場合が多いです。都庁側からしても、あえて遠い場所に配属して、多額の通勤手当を支出するのは無駄だからです。

 余談ですが、都庁では男女問わず、実家から通勤をしている若手職員が比較的多い印象を受けます。実家から通勤すれば20代のうちにかなりの貯金をすることも可能なため、20代は実家で暮らして、結婚と同時に家を買うというパターンの人もいます。

 いずれにせよ、転勤がないということは、人生プランが組みやすいという点において大きなメリットといえるでしょう。

給料が高い

 都庁の給料については、「高いと思う」と答える人が多かったです。

 一方、「公務員は給料が低い」とデメリットに感じている人も少なからずいたため、むしろデメリットかとも考えましたが、どちらかというと給料に満足している人の方が多かったため、メリットとして記載しました。

 筆者自身は、若手のうちは給料低いなと思っていましたが、入都5年目くらいになってくると、そこそこ上がってきたな、と感じるようになりました。銀行のエリア職から転職してきた後輩は、都庁に転職したことで、年収が100万以上アップしたと話をしていました。

 一方、民間企業(メーカー)から転職してきた同期は、転職で年収が100万程度下がったと話をしていました。しかし、勤務環境が明らかに改善したため、都庁に転職できてよかったと心から感謝していました(笑)具体的な給料については、別の記事で具体的に解説します。

アフターファイブが充実する

 都庁では、定時退庁ができる職場が比較的多いため、時間を自由に使えると回答した職員が多いです。もっとも、部署によって忙しさが全然違います。

 一般的にいうと、出先の事務所は時間にゆとりがある職場が多く、定時退庁をする職員が多いです。反対に、本庁では忙しい職場が比較的多く、深夜残業や休日出勤が常態化している職場もあります。

 しかし、本庁といえども本当に忙しい部署は限られています。現都知事が働き方改革に非常に熱心ということもあり、以前に比べて、本庁でも比較的ゆとりのある職場が増えたという印象です。なお、数は非常に少ないですが、出先事務所の中にも残業が月100時間を超えるような部署もあります。

 イメージをしやすいように、忙しさの目安を割合で示すと、概ね次のようになります。すごくざっくりとした区分けなので、参考程度ということでご了承下さい。

※勤務時間が9時~17時45分(12時~13時が昼休み)の職員の場合

  • 基本的に毎日残業(平均退庁22時以降):全職員の1割
  • 基本的に毎日残業(平均退庁20時以降):全職員の2割
  • 週5日のうち、2日程度残業(残業時は20時位まで):全職員の2割
  • 基本的に定時退庁:全職員の5割

 筆者自身の体感としては、全職員の半数程度は、基本的に定時退庁をしています。「本庁はどこも忙しい」というイメージを持っている方も多いと思いますが、本庁でも定時退庁ができる職場は多いです。

 また、基本的に毎日残業の部署も、1年のうち2~3か月程度は仕事の閑散期があることが多いため、1年を通してフルで毎日残業という部署は少ないです。それでも十分過ぎるぐらい忙しいですが(笑)

 出先事務所に配属されていて、基本的に残業がない職員は、スポーツジムやテニス・ゴルフスクールに通ったり、スキルアップのため資格の取得の勉強をしている人も多いです。また、当然ながら飲み会に明け暮れている人もいます。

 反対に、本庁の激務の部署にいる職員は、睡眠時間が削られ、毎日朝起きて職場に行くのがやっとの状態の人も多いです。

 メリットとは直接関係ありませんが、激務の部署には概して優秀な職員が配属されるため、出世には間違いなく有利です。がっつり働いて出世を目指すか、まったり過ごしてライフワークバランスを取るかが、都庁職員にとって究極の二択です。若手職員は、入都5年目くらいに、この選択をする時期がやってきます(笑)

 改めて別記事で解説をする予定ですが、忙しい部署ほど出世に必要な勤務成績が優遇されやすく、この傾向は主任試験の合格者・管理職試験の合格者の傾向からはっきりと見てとれます。つまり、「普段は出先事務所でまったり過ごしたいけど、出世の登竜門である管理職試験には一発で合格したい」というような良い所取りは、かなり難しいことになります。

有給休暇が取りやすい

 有給休暇については、非常に取りやすいです。

 都庁では毎年20日(入都初年度のみ15日)の有給休暇が与えられますが、自分の仕事の調整がつけば、フルに取得しても基本的に文句をいわれることはありません。一部、有給取得を快く思わない昭和時代の感覚のままの上司も存在していますが、そのような理不尽な上司は非常に少数派です。昔は多かったらしいので、時代に沿った良い傾向だと思います。

 基本的には、仕事の調整がつけばどれだけ休んでも特に文句はいわれませんし、「〇〇さん休みすぎだよね」と後ろ指を指されることもありません。むしろ、優秀な職員ほど、オンとオフをしっかりと切り替えて、有給休暇を積極的に取得して上手にリフレッシュをしている印象です。

 上で述べたとおり、激務の部署であっても一年間フルに激務という職場は少ないため、閑散期にある程度まとめて休みを取っている人が多いです。

 例えば、財務局の予算編成部署は都庁内でも死ぬほど忙しい部署といわれていますが、予算の提出が終わった年度末は業務の閑散期になります。そのため、余った有給休暇を取りつくすため、2月3月には一週間連続で有給休暇を入れるという話を聞いたこともあります。そこまで極端な職場はさすがに珍しいですが、毎年20日の有給休暇を取りつくす職員もそれほど珍しくありません。

 有給休暇を取って思いっきりリフレッシュしたい・色々旅行したい・有給が使えない会社は我慢できない、と考える方には、都庁はお薦めできる環境といえます。

男女平等が徹底している

 都庁では、男女平等が徹底しています。

 学生の方は実感が湧きづらいかもしれませんが、男女平等を謳いながらも、いまだに女性に家事や育児を負担させる前提で業務体制を組んでいる会社が多いのが現状だと思います。

 都庁はその点において、完全に男女平等です。例えば、給料は給料表の金額が自動的に適用されるため、男女で一切の差がありませんし、主任試験や管理職試験といった昇任試験を受ける際にも、女性だから受かりづらいということは一切ありません。勤務成績も、男女関係なく平等に評価されます。女性職員何名かに話を聞いてみても、男女差別を感じる機会は全くないと全員が答えていました

 ちなみに、男女平等が徹底されているため、体力的に恵まれていない女性でも激務の部門に容赦なく配属される可能性があります。その点については、予め覚悟しておく必要があるかもしれません。また、滞納された税金の徴収など、仕事の性質上女性にとって多少危険な環境であっても、普通に女性職員が配属されます。

 筆者自身は、男女平等の職場は理想的だと思っていますが、体力的に男性と同じ激務の職場は厳しいため、完全に男女平等にするのではなく、もう少し配慮してほしいと語る女性職員もいました。

都庁で働いているという意識が持てる

 なんだかんだ、「自分は都庁で働いている」というプライドを持っている人が多いです。某掲示板では、「首都公務員 キリッ」と揶揄されていますが、それです(笑)

 厳しい(と思われている?)採用試験を乗り越えて入都してきた人たちなので、プライドを持つことも理解はできます。筆者自身は、都庁職員がエリートとは決して思いませんが、自分が働いている組織に愛着が持てるということは、モチベーションの維持の観点からもとても重要なことだと思います。

 また、せっかく都庁に入都したのだからと、若手職員は概ね本庁配属を希望します。出先事務所にいると都庁で働いているという実感が得づらいため、若手職員が出先事務所に配属された場合(実際、若手の大半は出先事務所に配属されます)、早く新宿の本庁に異動したいと希望する職員が多いです。筆者も最初の配属は出先事務所でしたが、早く本庁に異動したいと考えていました。

 ちなみに、勤続年数が増えてくるほど、異動先として出先事務所を希望する職員が増えてくるのが面白いところです。出先事務所の方が色々な面で仕事にゆとりがある場合が多いため、コスパが明らかによいからです。

 人間歳を重ねると、理想より現実を取るということでしょうか(笑)

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都庁で働くデメリット

 続いて、都庁で働くデメリットの回答結果を解説します。

仕事がつまらない(回答者多数)

 都庁で働く最大のデメリットは、「仕事がつまらない」と感じる可能性が高いことです。実際に先輩や同期の話を聞いても、多くの人が、「仕事がつまらない」という感想を述べています。

 大きな理想を抱いて入都してきた新人職員が、現実とのギャップを感じて「仕事がつまらない」と感じることは、公務員だけでなくどの業界でも起こることだと思います。しかし、都庁の世界では、新人だけではなく多くの職員が、「仕事がつまらない」という感想を述べているという残念な現実があります。(民間企業の仕事だってつまらねーよ!と言われてしまえばそれまでですが(笑))

 これは、公務員の仕事の特性にあると筆者は考えています。あくまで一般的な話ですが、人が仕事にやりがいを感じるのは、概ね次のようなケースが多いのではないでしょうか。

  • 誰かの役に立っていることが実感できるとき(医師や弁護士・保育士等の士業など)
  • 自分の仕事の成果が形となったとき(メーカーの製品開発や、建設業など)
  • 自分の仕事の成果が認められたとき(営業成績や売り上げ等、成果が数値で表れ、それに応じた報酬が支払われる場合など)
  • 自分の好きな分野・得意分野で仕事ができるとき(デザイナー、美容師、写真家等、クリエイティブな仕事)

 もちろん、これらの仕事は多大なストレスがかかる場合も多く、大変だと感じることの方が多いと思います。しかし、大変ではあっても、やりがいを感じる機会が多いのではないでしょうか。

 一方、公務員の仕事は、上記の特徴を持つ職業とは対極にあります。誤解を恐れずに言ってしまえば、都民の役に立っていると実感できることはほとんどありませんし、特に事務職の場合、成果が形になることもありません。

 また、特に若手のうちは成果に関わらず給料がほぼ横並びの上、基本的に配属は人事の意向で決められるため、好きな分野・得意分野を仕事にできる人も極めて少ないです。

 仕事の内容については改めて詳細に解説しますが、公務員の仕事は世間のイメージどおり、「前例踏襲が目的の仕事」「意味のない仕事」「仕事のための仕事」「法令を守るためだけの仕事」「頭を使わないルーティーン業務」のような仕事が多いのも現実です。

 もちろん、クリエイティブな仕事も一部存在しますが、役所の性質上クリエイティブな業務自体が非常に少ないのです。役所の仕事は本質的にこのような性質を有するため、仕事内容にやりがいを実感することはなかなか難しいかもしれません。約10年間勤めていましたが、筆者には無理でした(笑)

 一方、仕事の内容自体にやりがいを感じられなくても、ゲームのレベル上げ感覚で仕事に取り組める人は、公務員の仕事でも楽しむことができます。生産的とはいえない作業でも、淡々とこなすことに苦痛を感じず、むしろ楽しめてしまう人が理想です。

 某有名実業家の方は、その方のブログで、「どんな仕事もゲーム感覚でやっているから、仕事がつまらないと感じたことはない」と話をしていました。筆者はそのようなスピリットの持ち主が非常に羨ましかったですが、そうはなれませんでした…。

専門性が身につかない

 都庁の仕事では、一部の職場(税務関係や教育関係等)を除いて、基本的に専門性を身に付けることは難しいです。  

 都庁だけではありませんが、公務員の仕事は人材の流動性を確保し、癒着を防止するため、2~3年に一度のタイミングで部署異動があります。そして、特に若手のうちは、色々な経験をさせるという観点からも、異動に際して従前の仕事と全く関係のない職場に回されることが多いです。

 2~3年仕事を頑張り、やっと仕事に慣れてきた、仕事を覚えてきたという段階で新しい職場に異動することが普通なので、どうしても専門性が身に付きません。

 例えば、年度末までは建設局の出先機関の建設事務所で、公共工事に関する住民説明を担当する係に配属されていてた職員が、4月1日から建設局の本庁で局内人事を管理する部門に配属されることもあります。出先事務所にいた頃は毎日のように外出をして、様々な住民と直接交渉をしていましたが、4月1日からは都庁外部の人と関わることが一切なくなるため、かなり大きな環境の変化です。

 また、住民説明と局内人事の管理は職務の性質があまりにかけ離れているため、出先事務所で学んだスキルを局内人事に活かすことは難しいです(もちろん、エクセル・パワポ作成等のパソコンスキル等は蓄積していきますが。)

 筆者自身も約10年間都庁で勤務し、合計5つの部署で仕事をしましたが、その5つの部署の間には関連性が薄く、「何か専門的スキルが身に着いたか?」と聞かれたら、正直回答に困ります(笑)

 しかし、視点を変えてみると、幅広い仕事を経験できるという点はメリットでもあります。専門性が身につかないという点はデメリットと感じる人が多いですが、幅広い仕事を経験できるという点でメリットに捉えることができる人が、むしろ公務員に向いているといえるでしょう。

 ちなみに、主税局や教育庁は、業務の内容が専門的なものを多く含むため、異動に際しても従前の仕事と全く関係のない職場に回されることより、これまでの経験を活かして働ける職場に配属される事例が多いようです。

 特に主税局は税のスペシャリストを養成したいと考えているため、主税局で積極的に仕事に励めば、税理士とも渡り合える程度の専門性を身に着けることが可能です。主税局から他局へ異動したがる若手職員が多いため、「俺は主税局一本で行く!」と入都時から決意をする人はかなりの少数派ですが。

転職しづらい

 前の項目とも関連しますが、一度公務員になってしまうと、通常の転職をすることは難しいと思います。公務員の仕事は基本的に専門性が身につかないため、公務員で数年間働いた人を改めて雇うメリットが、企業側にないからです。

 もっとも、都庁を退職して、例えば上場(有名)企業の総合職になろう、と考える人はほとんど存在しないため、そういった点ではあまり問題ないのかもしれません。

 筆者の知り合いで都庁から転職した人も何人かいましたが、NPOに入る・起業する・医学部に入りなおす・公認会計士になる・実家の稼業を継ぐ、等のケースで、都庁を退職して別の会社の事務系の職に就くという人は身近にはいませんでした。

仕事の評価と給料が連動していない

 都庁の給料は、基本的に勤続年数と職級(部長・課長・係長・ヒラ職員等)で決まります。幹部職員になると、勤務評定に応じてボーナスの額に大きな差が出てきますが、一般職員、特に若手職員のうちは、ほぼ横並びで昇進していきます。

 一応、都庁では勤務成績に応じて昇給の額に差をつけていますが、最も優秀な職員と普通の職員でも、月給で換算すると4~5千円の差しかないため、年収に換算しても数万円程度の差しか生まれません。これでは、必死に頑張って良い勤務成績を取るモチベーションにつながりにくい、と感じている職員が多いです。

 民間企業で特に実力重視の会社では、若手のうちから、勤務成績によって年収で100万円以上の差がつく会社も普通にありますので、そういった面を考えても都庁の給料体系を実力主義とはいうことはできないでしょう。

 もっとも、幹部職員へ出世していくためには勤務成績が重要になりますので、将来的には大きく差がつく可能性があります。しかし、入都後少なくとも10年間(課長代理級に昇進するまで)は、勤務実績と給料がほぼ横並びのため、仕事に対するモチベーションが上がりづらいのが事実です。この点をデメリットに感じている職員も多いです。

 反対に、「仕事はほどほどにしてプライベートを充実させたい」と考えている人にとっては、都庁の給与制度はメリットになる場合が多いでしょう。毎日職場に行って不祥事さえ起こさなければ、仕事ができなくても着実に昇給していきますので、仕事をほどほどにと考えている人にとっては、都庁は素晴らしい職場であることは間違いないです。そういった公務員が多いことは残念なことなのですが…。

忙しい

 メリットを紹介した際に、「アフターファイブが充実する」という声を紹介しましたが、「忙しい」と嘆く職員が多いのも事実です。これは部署により完全に異なるため、ゆとりのある部署は毎日のように定時で帰ることができますが、忙しい部署は22時程度の残業が当たり前の所が多いです。本当に忙しい部署に配属されたら、そこでの2~3年間は、ワープしたように記憶がなくなる人が多いです。

 筆者の上司の中で、死ぬほど忙しい部署(月残業平均100時間以上)に配属されたことのある人は、「俺が一番忙しかった30代前半の仕事以外の記憶が何もない」と言っていました。

 笑えない話ですが、本当に忙しい部門に配属された場合、人生の2~3年間が飛んでしまう可能性がありますので、その点についての覚悟も必要かもしれません。忙しい部署への配属が決定された場合、当然のことながら拒否権はありませんので、懲役刑と思って耐えましょう(笑)

 しかし、忙しい部署は花形部署が多く、勤務成績が高めに評価されやすいので、出世を目指す人たちの中にはは激務の部署に積極的に行きたがる人もいます。

 なお、配属自体は拒否できませんが、どうしても辛い場合は、次の年での異動を強く希望することで部署を出ることも可能です。もっとも、その場合はイレギュラーの異動ということで経歴に傷がついてしまい、出世を目指す上では大きな障害になることは覚悟しなければなりません。

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まとめ

 以上、実際に筆者が現役都庁職員10数名に聞いた結果を挙げてみました。都庁で働くことのメリット・デメリットが、少しでも現実的にイメージできるようになれば幸いです。

 記事をまとめていて筆者が驚いたのは、「仕事にやりがいがある」と答えた職員が一人もいなかったことです。深く話を聞くと、「今の仕事に満足している」という声は聞けましたが、「何がメリットだと思うか?」という問いに対して、第一声で「やりがいがある」「仕事が楽しい」と答えた職員が一人もいなかったのが残念です(笑)

 もちろん、仕事にやりがいがあると感じている職員もいらっしゃると思いますので、「都庁の仕事にやりがいはない」と言い切れるわけではありません。

 しかし、実際の都庁職員は、都庁で働くことのメリットを「やりがい」や「仕事の楽しさ」以外に捉えているケースが多いのは事実だと言えそうです。

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