都庁で出世するには?~管理職試験の合格方法~

 都庁に入都して「出来るだけ上に行きたい」「花形部署で活躍したい」、ストレートに言ってしまえば「出世したい」と考えている受験生も多いと思います。もっとも、「どうすれば出世できるのか?」「何をもって出世というのか?」について、具体的なイメージを持っていない方も多いのではないでしょうか。

 今回は、「都庁における出世とは何か?」を踏まえた上で、都庁で出世するために必要な方法について詳細に解説していきます。受験生だけでなく、現役若手職員の方も必見の内容です。

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1 はじめに

 難関の公務員試験を突破して都庁に入都したのだから、出来るだけ偉くなりたいと考える方も多いと思います。一方、都庁の内情を知らないと、出世について具体的なイメージを持つことも難しいでしょう。

 筆者自身の経験でも、入都前は「副知事がトップで、局長、部長、課長があって…」程度のイメージしか持っていませんでした。また、なんとなくですが、「部長ぐらいまで行けば出世なのかな?」のようなことを思っていました。

 某巨大掲示板や他のサイトを見ていても、「官房系(政策企画局・総務局・財務局)に配属されれば出世に有利」「最初の配属が都税事務所だと、期待されている」「合格順位と出世には相関性がある」などと、事実と都市伝説が混ざった情報が飛び交っています。

 今回は、そんな都庁での出世について詳細に解説していきます。まずはその前提となる、都庁の昇任システムについて簡単に見てみましょう。

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2 都庁の昇任制度

 

https://www.saiyou.metro.tokyo.lg.jp/ninyou.html

 この図は東京都人事委員会が公表している、都庁の昇任制度を簡潔に示す体系図です。この図のうち、都庁内で「昇任試験」と言われているのが、次の4つです。

  • 主任級職選考A
  • 主任級職選考B
  • 管理職選考A
  • 管理職選考B

 図の中にある「課長代理級職選考」については、面談と意向確認により実施され、条件を満たした場合は課長代理級への昇任がほぼ自動的に行われるため、都庁内においては昇任試験とは認識されていません。

※以下、任用体系図を前提に解説していきます。

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3 都庁における出世とは?

 どこまで出世したいか、については、当然人によって考え方が異なります。

 「俺はトップにしか興味がいないから、副知事まで到達できなかったら意味がない」と考える強気な職員も実際にいますし、「管理職(課長級以上)になれれば十分」と考える職員も多く存在します。反対に「出世しないで仕事は程々に頑張りたい」と出世に興味を示さない職員も非常に多く存在しています。

 このように、「どこまで出世したいか」については、職員個々人によって考え方にかなり差があります。一方で、都庁内部における多数の職員が考える出世の基準は非常に単純です。

 それは、管理職試験(管理職選考A又はB)に合格して管理職になること、です。

3-1 優秀な職員≠出世している職員

 どんなに優秀で仕事ができる職員であっても、管理職試験に合格していない(受験していない)場合、都庁では出世していると評価されることはありません。筆者の先輩・同期でも極めて優秀な職員がいましたが、その人たちは「管理職になって激務になるより、程々の役職で気ままに過ごしたい」という理由から管理職試験を受験していませんでした。

 管理職試験は、ある年度に落ちたとしても翌年度以降に改めて挑戦できるため、職場で極めて優秀と評価されている筆者の先輩・同期が管理職試験を受ければ、遅くとも何回目かの受験でほぼ間違いなく合格したと思います。

 このように、仕事上の評価も高く、周囲からも一目置かれているにも関わらず管理職試験を受けない職員も結構存在しています。しかし、これらの職員は、「〇〇さんは非常に優秀」という評価を受けることはあっても、「出世している」と言われることはありません。

 むしろ、「〇〇さんは実力もあって出世できたはずなのに、係長止まりで本当に勿体ないよね」と、出世していないことをネタに噂されることが多いです(笑)

 繰り返しになりますが、都庁における出世とは、管理職試験に合格して管理職になること、これに尽きます。

3-2 管理職になるには?

 では、どうすれば管理職になれるのでしょうか?

 これは非常に単純で、管理職選考A又はBを受験して合格すれば、管理職となる資格が与えられます。その後規定の年数(管理職選考Aでは通常5年、Bでは通常2年)を経過すれば、課長級(管理職)に昇進することができます。

 反対に、管理職試験を受験して合格していない以上、人事制度的に管理職になることはあり得ません。管理職になる=出世をするには、管理職試験に合格することが唯一の手段です。

 そして管理職試験に合格すれば、ほぼ間違いなく管理職に昇進することができます。制度上は、あまりに勤務成績が悪い場合・体調等に事情がある場合・本人が辞退した場合等、管理職試験に合格しても管理職に昇進できない場合もあるらしいのですが、少なくとも筆者の知っている限り、管理職試験に合格して課長になれなかった職員はいません。

 なお、一度管理職試験に合格して課長級に昇進すれば、それ以降の昇進(課長級→部長級、部長級→局長級、局長級→副知事)はすべて人事評価のみで、改めての昇任試験はありません。

3-3 管理職選考AとBの違いについて

 任用体系図を見てわかるとおり、管理職試験にはA選考とB選考があります。両者の違いを簡潔に説明すると、次のとおりです。

管理職A選考:若手職員から将来の幹部を抜擢するための選考試験。主任経験2~5年目の職員のみが受験できるため、受験回数に限りがある(最大4回)。合格後は課長代理(係長)級に昇進し、民間派遣や局間異動を経て、管理職に昇進する。

管理職B選考:課長代理(係長)として十分な実務経験を経た職員の中から、幹部を抜擢するための選考試験。課長代理級を3年以上経験し、かつ56歳未満の職員が受験できるため、実質的に受験回数に制限がない。合格後は統括課長代理に昇進し、最短2年間の実務を経て管理職に昇進する。

 単純にいってしまえば、管理職選考Aは若手から将来の幹部候補を選別するもの、管理職選考Bはベテラン職員から幹部候補を抜擢するものです。

 都庁内部での認識では、管理職選考Aの合格者こそ、ザ・エリートです。

 筆者の体感では、管理職選考A合格者の年齢のボリュームゾーンは30~35歳程度、管理職選考B合格者のボリュームゾーンは38~45歳程度のケースが多いように感じました。

 管理職選考AとBにはこのような違いがあるため、主任経験2~5年目の若手職員のみが受験できる管理職A選考を突破した職員のみが出世していると考える人もいますが、実際の職場においては、管理職B選考を突破した職員も出世していると評価されます。もっとも、そもそもあまり例がありませんが、55~56歳でようやく管理職B選考に受かっても出世しているとは評価されません。

 なお、都庁内部においても、特に若手職員は「管理職Aで受からないと、部長にはなれないんじゃない?」と誤解している方も多いですが、管理職選考Bで合格しても部長級には昇進できます。実際、管理職選考Bを突破して管理職に昇進した部長級も大勢存在しています

 しかし、局長級に達するには管理職選考Aで合格することが必須のようです。

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4 管理職試験の合格方法

 都庁の管理職試験は、次のとおり構成されています。

  • 1次試験:筆記試験+勤務成績
  • 2次試験:口頭試問(個別面談)

 では、そんな管理職試験に合格するには、どのように対策すればよいのでしょうか?

※今回は総論的な話を行い、個別の科目勉強法等については、改めて紹介する予定です。

4-1 管理職試験の合格率

 上で述べたとおり、都庁において出世をするには管理職試験に合格するしかないため、出世を目指す職員はすべからく管理職試験を受けることになります。一方、管理職のポスト数は限られているため、当然ながら受験する職員がすべて合格するわけではありません。

 「都庁の管理職試験は超難関」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 そんな管理職試験の合格率は、内部職員向けには公表されていますが、外部には公表されていません。万が一守秘義務に抵触するのも嫌なので、ぼやかした形での解説とさせていただきます(笑)

 近年の管理職試験の受験者に対する合格率は、概ね次のとおりです。

  • 管理職選考A:約5~10%
  • 管理職選考B:約15~20%

 出世を目指す若手職員は必然的に管理職選考Aを受けますが、この合格率から見てわかるとおり、管理職選考Aを突破するのは相当に狭き門とも言えそうです。

4-2 管理職試験は本当に難関か?

 このように、特に管理職選考Aについては合格率が例年1桁%台であるため、超難関というイメージ付いています。某雑誌の記事でも、「管理職試験の難易度は司法試験級」というタイトルを見たことがあります。

 確かに、都庁職員の中でも出世を目指す優秀層が受験する試験で、合格率が1桁%台であれば、超難関試験と噂されるのも理解はできます。実際に職員の中でも、管理職試験は超難関と考えている人も多いです。

 しかし、これには数字的なカラクリがあると筆者自身は考えています。

 なぜなら、管理職になるつもりがない記念受験者が相当数存在するからです。ちなみに筆者もその中の一人でした(笑)

 すでに周知の事実だと思いますが、管理職の忙しさや責任の多さ・コスパの悪さから、都庁にはそもそも管理職を目指さない職員がかなりの数存在しています。むしろ、本気で管理職試験を受験する人の方が明らかに少数派です。

 一方、都庁側はより優秀な人材を管理職に抜擢したいため、管理職試験の受験者数を増やそうとあらゆる手段を講じています。

 一例を挙げると、職場における管理職試験の受験対象者は、上司から管理職試験を受けるように促されるケースが極めて多いです。場合によっては、上司から呼び出されて個別に説得される場合もあります。

 こういった雰囲気の中、「管理職になるつもりはないけれども、上司の顔を立ててとりあえず受験する」という職員が膨大に存在しているのです。筆者自身も上司に促された上での記念受験でしたし、筆者の同期も記念受験組の職員が比較的多かったです。

 これは完全に筆者の感覚ですが、「絶対に受かりたい!」というモチベーションで管理職試験を受けている職員は、受験者の3割程度だと思います。その他の3割程度は「対象年次だから一応受けてみるか」「受かればラッキーだな」という感じで、残りは「上司に勧められたから義理で受けておく」という雰囲気です。

 本気で受けている人が3割程度だとしても、合格率が1桁%台である以上、難関試験であることは間違いありません。しかし、世間や都庁内で噂されているほどの超難関試験で、ごく一部しか合格できない試験というわけでもありません

 管理職になりたいと本気で思い、綿密な準備をしていれば、管理職選考Aといえども結構な確率で合格することが可能なのではないかと個人的には考えています。合格していない筆者が言うのも何ですが(笑)

4-3 管理職試験合格に必要な3つの要素

 上で述べたとおり、都庁の管理職試験は筆記試験+勤務成績で判定される1次試験と、口頭試問(個別面談)で判定される2次試験で構成されています。

 ざっくり見ると、1次試験の合格率は1割程度で、1次試験合格者が受験できる口頭試問の合格率は7割前後です。これを前提に、どんな職員が管理職試験に合格するのかについて、解説していきます。  

 先に結論を述べてしまうと、管理職試験に合格するために必要な要素は、次の3つです。

  1. 筆記試験を突破する学力
  2. 良好な勤務成績
  3. 管理職になりたいという熱い思い

 ①、②は当たり前すぎて誰もが納得すると思いますが、実は最も重要なのは③です。冗談みたいな話ですが、これは冗談ではありません。管理職試験を突破するのに最も重要なのは、モチベーションです。

 1次試験のうち、筆記試験は一般教養+論文で、都庁の入都試験(1類B方式)の一般教養と教養論文をイメージしてもらえれば構いません。もちろん、専門性や難易度は異なりますが、基本的にはあんな感じの試験です。

 つまり、客観的に公平なペーパー試験です。

 そして客観的に判定された筆記試験の点数にこれまでの勤務成績を考慮して、1次試験の合格者が決定されます。さらに、1次試験合格者の中から、管理職としての適性がない者を振り落とすために、2次試験(口頭試問)が実施されます。

 1次試験は難関といっても、所詮は一般教養と論文です。試験自体の難易度も決して高いわけではありません。都庁の入都試験を突破した職員なら、綿密な準備をすれば間違いなく突破できるレベルに達するでしょう。勤務成績も、初めから出世を目指して真面目に着実に頑張っていれば、それほど悪い評価を付けられることも少ないでしょう。さらに口頭試問についても、上司に頼めば親身に指導してくれます。

 しかし、管理職選考Aの受験資格である主任2~5年目は、比較的忙しい職場に配属される職員が多い時期です。また、年齢的にも30歳前後に主任に昇任する職員が多いため、ちょうど結婚や出産など、仕事以外にも様々なライフイベントが発生する時期であることが多いです。

 つまり、色々と忙しく、十分な勉強時間を取れない方がほとんどです。管理職を目指す多くの職員は「管理職に興味はあるけど、色々と忙しいし、いつか受かればいいや」的なモチベーションに陥ってしまうことが実に多いのです。

 それを見越して、例えば主任試験合格直後の時期から着々と準備をしていれば、かなりのアドバンテージを得ることが可能です。実際、出世したいと口では言っていても、受験資格を得る前の時期から着々と先を見据えている職員は非常に少数です。本気で受かりたい、と高いモチベーションを持ちつつ、着実に準備をしている職員が勝ちやすいのは明らかです。

 とは言え、早い時期から管理職試験を意識していれば、周りの職員からは「あいつは意識高い系だ」と馬鹿にされることもあるでしょう。なので周りに公言せずに、着々と準備をしておくことが重要だと筆者は考えます。しかし、一人で着々と準備を進めることは、相当なモチベーションが必要です。管理職になりたいという熱い思いが必要とは、こういうことです。

 このように、管理職試験を受ける職員の大半は、準備時間が不十分管理職試験に対して本気になっていないそもそも記念受験、といった感じであるため、絶対に受かりたいというモチベーションで本気で勉強すれば、合格率をかなり上げることが可能です。

 なお、まれに全然準備をしておらず、かつとりあえず受験で合格してしまう職員もいますが、極めて少数派なので参考にしてはいけません(笑)

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5 まとめ

 今回は、都庁における出世について解説しました。簡単にまとめると次のとおりです。

  • 出世とは、管理職選考A又はBに合格すること
  • 管理職になるには、管理選考に合格するしか道はない
  • 管理職選考の合格率は極めて低いが、本気で受けている人も少数
  • 主任2~5年目は、仕事的にもライフスタイル的にも多忙な時期
  • 本気で受かりたいなら、何よりも熱意が重要
  • 主任に昇進し、忙しくなる前から管理職試験の準備をしている人は少数

 何だか精神論的な話になってしまいましたが、これが都庁内での現実です。実際に、本気で管理職を目指している職員と、何となく管理職試験を受けている職員との間の合格率の差には、歴然足るものがあります。

 出世を目指すならば、周りの意見には左右されずに、モチベーションをキープしつつ着々と準備を進めることを強くお薦めします!

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