都庁の採用人数を詳細解説

「来年、都庁は何名採用する予定なのだろうか?」「自分が受験する予定の2年後はどうだろうか?」

 都庁の採用人数の多寡については、そのまま試験の難易度に直結するため、受験生の全員が気になる情報だと思います。

 当然ながら、採用人数が減少した場合、試験の難易度は上昇します。

 今回は、受験生が気になる都庁の採用人数の決まり方と、今後の採用人数の予想について、守秘義務に抵触しない範囲で詳細に解説していきます。

 「採用人数が何人だろうが、自分はどうせ受かるから特に気にならない」という超強気の方は、今回の記事は読み飛ばしていただいても大丈夫です(笑)

 また、今回の記事はあくまで筆者個人の分析に基づく予想ですので、大きく外す可能性もあります。予めご了承の上、参考程度にご活用下さい。

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1 はじめに

 上で述べたとおり、採用人数が受験生の最も大きい関心事であることは間違いありません。採用人数が500名である場合と採用人数が200名である年度を比較した場合、単純に考えると、500名の年度に受験していれば受かっていたはずの300名が、200名の年度に受験した場合には不合格になります。都庁のみならず公務員試験では、このような採用人数の激変が頻繁に起こりえます

 大学受験を考えてみると、例年300名募集していた学部が今年から100名しか募集しないということはまずあり得ないでしょう。

 このまずあり得ないことが、公務員試験では普通に起こります。

 そして、受験生にとって本当に悩ましいことは、試験直前にならないと採用予定者数がわからないということです。

 都庁の採用試験にしても、例年5月の初旬(令和2年はコロナの影響で延期)に筆記試験が行われますが、採用人数が公表されるのは、2月の末頃であることが多いです。

※令和2年度(コロナ延期前)は、1類B採用試験の実施日5月3日に対し、採用人数の公表は2月27日

 つまり、採用人数を見てから「今年は採用人数が多いから目指してみるか」と決めることや、「今年は採用人数少ないから都庁は諦めて他の自治体を受けよう」と決めることが、日程の関係からほぼ不可能なのです。受験生にとっては、2月末の採用人数の公表日は、第一段階の合格発表日と言っても過言ではありません。

 筆者が受験した際も、結果的に採用予定者数が多かった年だったのですが、公表日に心臓バクバクで採用予定者数を確認した記憶があります(笑)

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2 採用人数の推移

 では、近年の都庁採用試験の採用予定者数の推移を見てみましょう。

※この記事では事務職について紹介するため、1類A、1類B一般方式、1類B新方式、3類のみ紹介します。なお、1類B新方式は平成25年度採用より実施。Rは令和、Hは平成。

1A1B一般1B新3類合計
令和2年63 (40)265 (135)90 (40)40 (25)458 (240)
令和元年7529010045510
平成30年10032011045575
平成29年11534011050615
平成28年9536510550615
平成27年9048410055729
平成26年604385045593
平成25年524005045547
平成24年5549950604
平成23年4045050540
平成22年4045445539

※令和2年の()内は、コロナによる延期前の採用予定者数。データは東京都職員採用のHPから引用。

 年度によりばらつきはありますが、近年はほぼ500人~600人程度で推移しています。平成27年度は、例外的に729人という多人数でした。

 一方、人事委員会の採用HPにはデータが残っていませんが、平成10年代は採用者数が少なかった年も多く、合計で100人~200人台の年もあったと記憶しています。つまり、ここ10年は、受験生にとってはかなり好条件が続いているのです。

 しかし、令和2年は458人と、ここ10年で最も少ない採用予定者数となっています。さらに恐ろしいことに、コロナによる延期前は合計240人と、異常に少ない採用予定者数でした。延期により採用予定者数が倍増したことに、ホッとした受験生も多かったことでしょう。

 では、なぜこのような推移となるのでしょうか?

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3 採用人数をどう決めているのか?

 公務員受験生の間では、「退職者が多い年は新規採用者が増える」という話をよく耳にします。筆者も受験生時代、この話を信じていました。

 もっとも外部からは退職者数を知る術がないので、あまり意味はないのですが(笑)

 それは抜きにしても、上の噂は一見もっともな話っぽく聞こえます。

 実際、これは正しいのでしょうか?

3-1 退職者と採用人数

 結論を先に述べると、「退職者が多い年は新規採用者が増える」は、半分正しく半分誤りです。 誤りというよりも、正確ではない、と表現した方が正しいかもしれません。

 では、例を出して具体的に解説していきます。

 まず大前提ですが、人事委員会が採用予定者数を決定する際、人数を適当に決めているわけではありません(笑)

 次のように、各局が必要とする人数を事前に精査した上で決定しています。

 例えば、A局には現在500名の職員がいて、年度末までに定年退職や転職等で、20名が退職予定だとします。一方、A局では組織(部署)の拡張や縮減は予定されていません。定年退職するのは部長級や課長級、課長代理級などの役職者が多いですが、このようなエラい職員が去った後は、新たに職員を昇級させてこれらの役職に充てます。すると、必然的に一番下の主事職員(ヒラ職員)が不足するため、新規職員を20名採用して、不足したポストに補填します。

 イメージしやすくするため、めちゃめちゃ簡略化して解説しましたが、これがすべての基本形です。実際は、すべての局レベルで人の行き来があり、また、局毎に人事定数が設定されるため単純ではありませんが、基本形は上記のとおりです。

 人事委員会は、各局から退職予定者数と新たに必要な職員数を収集して、新規採用職員の数を決定しています

 つまり、退職予定者数≒新規採用者数は、この点においては正しいことになります。ここ10年の採用予定者数が概ね多かった要因の一つは、団塊の世代の大量退職に伴う職員の募集だったのです。

3-2 組織変更と採用人数

 もっとも、近年の都庁では新規採用者を決めるにあたり、退職予定者数よりも大きなファクターが存在していました。それが、大規模な組織変更です。

 どんな組織変更があったか、それは皆さまご存知のとおり、2020年のオリ・パラ関連です。オリ・パラの準備に大量の人員が必要になるため、オリ・パラ関連業務のための職員を大量に採用していたのです。

 新規採用職員がそのままオリ・パラ関連業務に配属されることは稀ですが、各局から若手職員がオリ・パラ関連部署に大量に異動しているため、その穴を埋めるために、新規採用職員数が増加しているのです。

 もちろん、オリ・パラ以外にも多くの人員が必要になった場合には、採用予定者数が一気に伸びることも考えられます。しかし、実際はオリ・パラ関連以外でそこまで多くの人員を要するプロジェクトがない(と思われる)ため、オリ・パラ関連以外の組織変更はあまり影響していません。

3-3 令和2年度の採用予定者数が激減した理由

 以上を踏まえると、「なぜ令和2年度の当初採用予定者数が大幅に減ったのか?」、そして「なぜ延期後の採用予定者数が少し持ち直したのか?」の説明もできます。

 簡単に述べると、次のとおりです。

 オリ・パラの準備がほぼ終わり、オリ・パラ関連業務で必要な人員が激減しました。一方、オリ・パラ関連業務に従事していた職員が、順次元の局に戻ることになります。しかし、元の局では特に多くの職員を必要としていません。そのため、派遣職員を戻す代わりに、新規採用職員数を大幅にカットするのです。

 しかしオリ・パラの延期が決まったため、引き続き一定数の職員がオリ・パラの準備に必要になり、元の局に戻る職員が予想より減りました。結果、新規採用職員が必要となった、というわけです。

 2020年7月に実施予定だったオリ・パラの準備に向けて、2020年4月に新たな職員を配置する必要性は少ないでしょう。ほとんどの準備は終わっていますから。

 しかし、1年延期するとなれば話は別です。延期に向けて、凄まじい量の調整業務が新たに発生します。

 これが、令和2年度の採用予定者数が、延期前から延期後で増加した理由だと筆者は分析しています。

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4 今後の採用人数を予想

 では、これまでの解説を踏まえ、今後の採用人数の推移を予想してみます。

 まず、令和3年度の採用人数ですが、おそらく激減すると思います。

 令和2年度の当初採用予定者数と同レベル、又はそれ以上に減少すると筆者は予想しています。

 さらに、令和4年度の採用人数は、令和3年度以上に減少すると予想しています。

 なぜなら、上で述べたとおり、オリ・パラ関連業務に従事していた職員(主に大会組織委員会に派遣されている職員)が、都庁に戻ってくるからです。当然ながら、オリ・パラ業務に派遣されている職員をクビにするわけにはいきませんので、いずれかの局に戻す必要があります。しかし、派遣元である元々の局の業務が増えているわけではありません。すなわち、新規採用数を減らして調整するしかないのです。

 あくまで筆者個人の予想ですが、令和3年度と令和4年度の採用予定者数はかなり減少すると思います。

 一方、コロナ禍の影響で不景気になることが予想される以上、公務員人気が増加し、都庁の受験者数は増加すると予想されます。

 受験生の皆様には残念な予想で大変恐縮ですが、令和3年度と令和4年度の都庁受験を目指す方は、例年よりもかなり高い学力をつけなければ、合格は厳しくなるかもしれません。

 令和5年度以降は、300~400名程度まで回復してくるとは思うのですが、すでに団塊世代の退職の影響が完全に失われているため、そんなに回復しない可能性もあります。

 今後数年の都庁受験は、なかなか厳しくなると筆者は考えています。

※あくまで筆者個人の分析・予想ですので、事実と異なる可能性も十分にあります。そこをご理解の上、参考程度にご活用下さい。

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5 まとめ

 以上、ネガティブな情報についての解説となってしまいましたが、思うところを正直に述べました。

 筆者自身、筆者の予想が外れることを祈っています。しかし筆者のこれまでの経験と人事制度の実態を踏まえると、残念ながら予想が当たってしまう可能性もあると思います。

 とは言いつつ、採用予定者数は蓋を開けてみなければわからないので、難易度が上がった場合にも合格できるよう、出来る限りの対策をしておきましょう!  

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