都庁専門記述の過去問と解説①~憲法(令和3年)~

 当ブログチームでは、都庁1類B専門記述の過去問の解答例と解説を作成・販売しております。

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令和3年(問題)

 憲法改正の意義及び手続について述べた上で、憲法改正の限界について学説に言及して説明せよ。

(総評)

  • 重要度:★☆☆☆☆
  • 難易度:★★★★☆

 憲法改正については、憲法上は重要なテーマですが、本年以外に出題がされていないこと・本年に出題がされたことを踏まえると、令和4年試験における二年連続の出題可能性は限りなくゼロに近いと思われます。よって、重要度は★1としました。

 内容については、憲法改正の限界については様々な学説が存在し、理論的に理解が難解な点もあります(答案に表現することはより難しいと思います)。よって、難易度は★4としました。

 令和4年の出題可能性は極めて低いと思われますので、時間がなければ、解答例を一読する程度の対応でも十分でしょう。

(解答例)

1 憲法改正の意義について

 憲法改正とは、憲法の内容について、憲法に規定された手続に従い変更を行うことである。日本国憲法は、国民主権・平和主義・基本的人権の尊重を基本理念としているが、その細目たる条項については、時代の変化により変更を要する場合があるため、憲法改正という概念が必要となる。

 もっとも、憲法は国の最高法規(98条1項)であり、国家の基盤となるものであるため、高度の安定性が求められる。そのため、日本国憲法は、憲法改正において通常の法律とは異なる厳格な手続を要請している(硬性憲法)。

2 憲法改正の手続について

 憲法改正の手続は、以下の3段階による。

(1)国会の発議(96条1項前段)

 憲法の改正は、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民に提案してその承認を得なければならない。

(2)国民の承認(96条1項後段)

 国会が発議した憲法改正案は、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 なお、「日本国憲法の改正手続に関する法律」により、国民の過半数の賛成とは、投票総数の過半数とすることが規定されている(同法126条1項、98条 2 項)。

(3)天皇による公布(96条2項、7条1号)

 上記の国民の承認を得た際には、天皇は内閣の助言と承認に基づき、国民の名で直ちにこれを公布する。

3 憲法改正の限界について

 憲法が国民主権を採用している(1条)以上、国民の制憲権は絶対的で、上記の手続によれば無制限に憲法を改正することができるとする説がある(無限界説)。

 しかし、憲法改正権は制憲権自体とは異なり、制憲権によって与えられ憲法内で具体化されている一つの権利にすぎないと解すべきである。このように考えると、憲法改正によって、制憲権の根拠である国民主権原理自体を否定することは理論的に不可能となる。

 よって、憲法改正には一定の限界があり、国民主権原理のほか、平和主義・基本的人権の尊重という憲法の根本理念を否定するような改正は許されないと解すべきである(限界説)。

以上(853字)

(解説)

 題意に沿って、

  • 1憲法改正の意義について
  • 2憲法改正の手続について
  • 3憲法改正の限界について

とナンバリングを分けると答案が書きやすいでしょう。

 1では、憲法改正の定義を簡潔に述べた上で、憲法改正の必要性、憲法の特殊性(硬性憲法)について触れることができれば十分です。その際、最高法規性の根拠である98条1項は指摘しましょう。

 2では、国会の発議・国民の承認・天皇による公布という3つの手続について、必ず条文を指摘して説明をしましょう。条文を記憶していない場合・曖昧な場合はやむを得ませんが、可能な限り条文は指摘できるようにしたいところです。その際、「前段」「後段」の記載も必要です。国会の発議については、「出席」議員ではなく「総」議員の3分の2以上であることに要注意です。「日本国憲法の改正手続に関する法律」(国民投票法)はマイナー知識かもしれませんが、手続上極めて重要なポイントであるため、書くことができれば加点要素になると思われます。この機に条文ごと暗記してしまいましょう。

 3では、「学説に言及して」との指示がありますが、有名な「無限界説」と「限界説」について簡潔に説明できれば十分です。理論的に難しい部分ですので、解答例を読んで「よくわからない」と思ったら、参考書等でこの論点について確認をしておきましょう。なお、限界説が通説と言われていますが、無限界説を自説にしても問題ありません。

 一度理解してしまえば決して難しい問題ではありませんが、都庁では過去に出題例がないため、試験時にしっかりと解答できた受験生は多くないと推測されます。仮に憲法改正の限界についての学説を知らなくても、憲法改正の意義について触れ、手続について条文を丁寧に紹介すれば、相対的に沈まない点数は付くでしょう。

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