都庁専門記述試験の対策方法~過去問の重要性~

  今現在、「都庁に入都したい」「都庁に転職したい」と考えている方も多いと思います。しかし、「どうやって過去問を勉強すればいいかわからない」「独学でもいけるのか?」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

 今回は、都庁受験の中でも一番の関門といわれている、専門記述の対策方法について詳細に解説していきます。なお、以下の記事は1類B一般方式についての解説となりますので、ご承知置き下さい。

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1 はじめに

 公務員受験生の中でも、都庁は特に人気のある自治体です。しかし、他の一般的な自治体と異なり、都庁は採用試験に専門記述を課しています。(詳細は都庁試験の勉強をいつからするか?を参照)

 この専門記述試験が、都庁受験のハードルを高くしている最大の要因だと思います。筆者自身は、専門記述試験の配点自体は決して高くないと予想していますが(詳細は都庁採用試験の配点と合格点を参照)、都庁用の対策をしていないと歯が立たないため、必然的に多くの受験生を悩ませる原因となってしまうのです。

 また、「専門記述さえなければ都庁を併願できるのに」と考えている受験生も多いのではないでしょうか。実際、「本当は都庁を受けたかったけど、専門記述があるため、やむを得ず特別区を受けた」という方の話も聞いたことがあります。

※特別区の専門試験は、他の一般的な自治体と同じく択一式です。

 しかし、そんな専門記述も、しっかりと過去問を勉強して対策方法を理解し、着実に対策をすればまったく恐れることはないのです。

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 2 科目の選択方法

 まずは基本の確認ですが、都庁の専門記述は、10科目の中から3科目を選択して解答する形式です。選択する科目については事前に申請する必要がなく、試験当日に問題を見て、どれを解くか決めることができます。ですので、10科目すべての準備を万全にしておけば、合格の可能性はかなり高くなります。もちろん、そんな人を見たことはありませんが(笑)

2-1 専門記述の出題科目

 令和3年現在、都庁の専門記述では以下の10科目が出題されています。

①憲法 ②行政法 ③民法 ④経済学 ⑤財政学 ⑥政治学 ⑦行政学 ⑧社会学 ⑨会計学 ⑩経営学

 それぞれの科目について、難易度は年度によって大きく異なるため、「どの科目が簡単か?」を一概に言うことはできません。

 例えば、⑥政治学、は非常に取っつきやすく、受験生の大半が準備をしてくる科目でもありますが、年度によってはかなり難しい問題が出題されることもあります。反対に、③民法、は覚えることが多く初学者が敬遠しがちですが、年度によっては非常に易しい問題が出題されます。

 なお、800字程度が合格答案の概ねの目途と言われています。

 それでは、受験に向けて何科目の勉強をするべきでしょうか?

2-2 何科目準備すべきか?

 受験生の方が最も気になるのは、「何科目準備すべきか?」という点だと思います。当然、筆者自身もめちゃめちゃ悩みました。

 現役職員の中でも、「最低限の3科目しか準備してないけど合格した」という人もいますが、「確実に合格したい」「少しでも合格の可能性を上げたい」と思うならば絶対に真似をすべきではありません。

 前述のとおり、専門記述の難易度は、年度と科目によって大きく異なります。選択者が最も多いと考えられる、憲法・政治学・行政学・社会学を例に考えてみると、

令和〇年

憲法:難 政治学:並 行政学:並 社会学:易

令和×年

憲法:易 政治学:難 行政学:並 社会学:並  

のような事もあります。

 このような場合、当初から政治学・行政学・社会学の3科目しか準備をしていなかった場合、令和〇年の試験では着実に合格点を稼ぐことができるでしょうが、令和×年の試験では、易しい憲法を解くことができず、難易度の高い政治学にチャレンジしなければいけなくなります。

 一方、4科目を準備してきている受験生は、令和〇年では政治学・行政学・社会学を、令和×年では憲法・行政学・社会学という感じで、自分に有利な方向で選択することができるのです。

 難易度の高い問題を選択した場合、受験生全体の答案レベルも下がるため、その科目での合格点も取りやすいとは思われますが、そもそも極めてマイナーな思想家や用語の説明を求められた場合、完全にお手上げになってしまうので、そのような科目を選択することは死を意味するでしょう(笑)

 都庁の専門記述では、毎年必ず難易度が(極めて)高い科目が複数科目存在するので、3科目のみの準備ではギャンブル要素が強すぎるのです。3科目の準備のみで合格した職員は、偶然運が良かっただけとも言えるでしょう。都庁に本気で受かりたいなら、初めからそのようなギャンブルをすべきではありません。

 そして、準備すべき科目は4~5科目がベターです。4科目準備しておけば基本的には問題ありませんが、合格可能性を少しでも上げたい方や、時間に余裕のある学生等には、5科目の準備をお薦めしたいところです。

2-3 どの科目を選択すべきか?

 専門記述はこのような特性を持っているため、「どの科目を勉強するか?」は、すごく悩みそうな問題だと思うかもしれません。しかし、実際の都庁職員で、これについて悩んだ人はあまり見たことがありません。というのも、大半の職員が同じ科目を選択しているからです。

 その科目は、次の4つです。

①憲法 ⑥政治学 ⑦行政学 ⑧社会学

 経済学部や商学部・経営学部で専門に勉強をしてきた人の中には、④経済学や、⑨会計学、⑩経営学を選択する場合もありますし、法学部で法律を専門に勉強してきた人の中には、②行政法や、③民法を選択する人も多いです。

 しかし、大学でそれほど専門的な勉強をしていない場合や、そもそも大学で真面目に勉強していない(笑)場合は、ほとんどの受験生が上記の4科目を選択します。

 その理由は単純で、勉強を始めるのにハードルが低いから、です。

 前述のとおり、年度によって各科目間での難易度が大きく異なるため、どの科目を選択すると有利か?ということはありません。選択者は非常に少ないですが、会計学や経営学を専門に勉強してきた人からすれば、⑨会計学や、⑩経営学の問題が、受験者の多い政治学と比較して非常に易しく感じられる場合もあるでしょう。

 しかし、経済学や会計学は、勉強をするのにも一定の基礎知識(会計学の場合は簿記等)が必要となります。それに対し、⑥政治学、⑦行政学、⑧社会学は、勉強を始めるにあたり一切の予備知識が必要となりません。

 ゼロから始めて、ただ模範解答を覚えるだけで試験を突破することができるため、これらの科目に人気が集まると考えれられます。

 なお、①憲法、については、政治学・行政学・社会学と異なりある程度の基礎知識が必要となるのですが、行政学や民法と異なり、比較的初学者にも取っつきやすいこと・覚えることが少ないことから、多くの受験生が選択してきます。

 「不安だから5科目勉強したい」と感じる方は、上記4科目に、プラスして②行政法、を選択することをお薦めします。憲法よりも最初のハードルは高いと感じる方が多いと思いますが、一度基本を理解すれば、比較的答案が書きやすいからです。

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3 専門記述の対策方法

 それでは、専門記述の具体的な対策方法について解説していきます。

3-1 対策とは、「論点を覚える」こと

 まず初めに、専門記述の対策に対して、どのようなイメージを持っているでしょうか?

 「どの範囲が出題されても書けるように、科目全体の理解を深める」

 「様々な問題集を解いて、記述式のテストに慣れる」

 勉強をこれから始める方は、都庁の専門記述対策に対して、このようなイメージを持っている場合も多いと思います。勉強法として間違っているとはいえませんが、都庁の専門記述対策に対しては、あまり効果的とはいえません。

 では、どのように対策をすればよいのか?答えは非常に単純です。

 都庁の専門記述は、「論点」を覚えましょう

 合格者の大半は、この「論点」を覚える勉強をしてきています。この論点を覚えるとは、例えば憲法を例にすると、次の事柄について丸ごと覚えることを意味します。

①外国人の人権について

②法の下の平等について

③表現の自由について

④司法権の独立について

⑤違憲立法審査制について

 ①~⑤について、模範解答(の流れ)を覚えてしまうのです。そして本番に覚えた論点が出題されたら、覚えたことをそのまま吐き出します。実際、憲法では、「外国人の人権について説明せよ」という問題が、平成以降で3回ほど繰り返し出題がされています

 学問的に正しい勉強法ということはお世辞にもできませんが、合格者の大半は各科目について、このような勉強方法を採用しています。筆者の同期は、写経と表現していました(笑)

 都庁の専門記述は、この写経を「どれだけの数」「正確に」覚えるか、によって決まる試験なのです

 ちなみに、筆者の周辺の職員に話を聞くと、合格者は概ね1科目20~30論点×4科目~5科目の準備をしている場合が多いです。合計すると、80~120論点といった所です。

 もちろん、人によっては50論点程度しか勉強していない場合や、150論点を超える勉強をしている人もいますが、50論点で挑むことはギャンブル要素が高くなり、お薦めはできないということが分かってもらえると思います。

 筆者自身の経験では、4科目(憲法・政治学・行政学・社会学)×25論点程度と、サブ科目として1科目(行政法)×5論点程準備しました。そして本番は、サブの5論点が完全に的中して、メインの2科目とサブの1科目で答案を書いた記憶があります。

 では、この論点を覚える勉強法は、どのように実施すればよいでしょうか?

3-2 予備校は利用すべきか?

 お金に余裕のある方は、予備校を利用して下さい 。これがすべてです(笑)

 都庁試験の勉強法(独学か予備校か)で詳細に解説しておりますが、現状、大手予備校のカリキュラム以上に、効率的かつ効果的な受験対策方法はないと思います。

 特に専門記述対策については、覚えるべき論点を網羅した都庁対策用のテキストが充実しており、かつ、テキストの解説講義も受講できるため、専門記述の初学者にとっても非常に学びやすいものとなっています。

 お金に余裕があるならば、深く考えずに予備校に数十万円をお布施して(笑)、合格可能性を上げることをお薦めします。合格すればすぐに回収できる費用ですので。

 とは言いつつ、「効果的なのはわかるけど、数十万円も払いたくない…」「とりあえずチャレンジして、無理だったらやめようと思っているので、数十万円も払えない」「一般教養は自分で何とかできるのに、専門記述対策だけでそんなにお金払えない」などなど、様々な理由から予備校を利用することを渋る人も多いのではないでしょうか。

 筆者自身、予備校を利用すれば合格可能性が上がることは認識しつつも、予備校代をケチって独学で勉強をしたので気持ちはよくわかります。もっとも、筆者の場合、ゼミでテキスト等の情報が貰えたほか、先輩からの指導を受けることもできたため、完全な独学とは環境が大きく異なるとは思いますが。  

 このように、「お金に余裕があり、都庁に絶対に受かりたい」と決意している方にとっては大手予備校を選択することがベストだと思いますが、勉強を始めた段階では、必ずしもそうではない方もいらっしゃると思います。

3-3 独学者向けの勉強方法

 そこで、独学者向けの専門記述の勉強方法を詳細に解説してきます。なお、憲法と、政治学・行政学・社会学の勉強方法は少し異なるため、それぞれについて紹介します。

(1)憲法

① 薄めの入門書(大手予備校が出版している物)を読む

② 過去問を見て、模範解答を読み込む

③ わからない部分があったら、①で読んだ入門書や、ネットで調べる

④ ②、③を、過去問の問題を見て瞬時に自分で解答が書けるようになる程度まで繰り返す

⑤ 過去問に出題されていない重要テーマについて、問題集等を活用してストックする

 憲法は、①~⑤を繰り返せば確実に合格レベルに達することができます。どうしても時間がない場合は、⑤をカットしても、本番で十分な答案を書ける可能性は高いでしょう(ギャンブル要素は高まりますが)。

 それでは、①~⑤を行う理由について解説していきます。

 まず、①ですが、憲法には基本となる考え方や用語があり(違憲審査基準・新しい人権・生存権・違憲立法審査権等)、これを理解していないと過去問の解答を読むことさえ出来ないと思います。そのため、憲法の全体像を把握すると同時に、基本の用語について理解しておく必要があります

 もっとも、法学部の授業で使用するような、大学の教授が書いた専門的な教科書は必要ありません。都庁で出題される憲法は、学問的には非常に基本的な問題しか出題されないため、大手予備校が出版している公務員試験用の入門テキストで十分です。

 なお、テキストを読み込む際は、一つ一つのテーマを完璧に理解してから先に進むのではなく、流し読み程度でよいので、全体を何度も何度も繰り返して読み込む方が効果的です。全体像を把握して初めて、個別のテーマについて理解ができるようになることも多いので、最初は細部にこだわらず、憲法の全体像を掴むことを重視しましょう。

 次に、②ですが、①で基本的な憲法の考え方や用語が理解できたならば、実際に過去問に取り組むことが有効です。というのも、都庁では過去出題された問題が繰り返し出題される可能性が非常に高いからです。

 もっとも、いきなり800字程度の答案を書けといわれても、おそらく書けないでしょう。なので、最初は問題を見て、解答例を読み込むことから始めることをお薦めします。

 そして、③です。解答例を読んで、わからない箇所があったら、その都度調べましょう。入門書で確認をするほか、最近では資格試験のブログ等でも有用な情報が満載ですので、ネットで調べることも効果的です。

 次に、④です。この段階になったら、実際に手を動かして答案を作成してみることが効果的です。すべて書くのが時間的に厳しいならば、答案構成(ナンバリングやタイトルをつけたり、書く内容のメモ)の作成でも構いません。もっとも、本番に備えて、800字を手で書くには何分かかるのか、は絶対に把握しておきましょう

 最後に⑤です。①~④の準備でも問題ありませんが、稀に過去問に出題されたことのない問題も出題されます。そのため、過去問に出ていない重要なテーマについて、自分で800字程度の答案を準備しておくと、準備は万全です。

 以上を繰り返します。必然的に1科目だけでもかなりの時間がかかると思います。

 人にもよりますが、「過去問を見て解説を読む」行為は、1論点につき最低20~30回は繰り返すことになるでしょう。筆者も自力で答案が書けるようになるまでに、それぐらいかかりました(笑)

※憲法の過去問と、本ブログチームが作成した模範解答は、こちらで販売しております。

(2)政治学・行政学・社会学

① 過去問を見て、模範解答を読み込む

② 薄めの入門書(大手予備校が出版している物)で、該当箇所を読む

③ ①、②を、過去問の問題を見て解答が自分で書けるようになる程度まで繰り返す

④ 過去問に出題されていない重要テーマについて、問題集等を活用してストックする

 政治学・行政学・社会学の勉強については、上記の方法をお薦めします。憲法と異なり、最初に入門書を読む必要はありません。というのも、憲法と異なり、学問的に全体像というものがないからです。  

 例えば、「〇〇の思想について説明せよ」という問題が出題された場合、憲法とは異なり、全体の流れを知らないと〇〇の思想について理解できない、ということがないのです。なので、過去問の模範解答を読んでから、入門書で当該箇所を確認すれば十分です。

 上でも述べましたが、政治学・行政学・社会学については、勉強するのに基礎知識が必要ないため、多くの受験生が選択してくるのだと思います。

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4 まとめ

 今回は、都庁の専門記述対策について解説してきました。簡単にまとめると次のとおりです。

  • 専門記述は、10科目中3科目をその場で選択
  • 概ね800字程度が合格答案の目安
  • 対策方法は、とにかく「論点」を覚えること
  • 合格者は、80~120論点を覚えているケースが多い
  • お金に余裕があるならば予備校を利用するべき
  • 特に専門で勉強をしていないならば、憲法・政治学・行政学・社会学がお薦め

 と、予備校から広告費を一切貰っていませんが(笑)、予備校に通うことがベストであることは間違いないと思います。

 もし、「予備校までは行かなくていいや~」と感じるならば、筆者のチームで過去問の解答・解説を比較的安価に提供していますので、ご活用いただけると非常に嬉しいです。

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