「都庁への転職に興味はあるけど、なかなか行動に移せない」という社会人の方も、多くいらっしゃると思います。筆者の知り合いにも、転職をして都庁に入都した職員が何人もいますが、「行動に移すまでに時間がかかった」と振り返る人が多かったです。
今回は、実際に転職をして都庁に入都してきた職員の体験を踏まえて、転職者希望者が持つ疑問・質問について解説していきます。
※本ブログチームでは、平成元年~令和3年までの過去問の解答例と解説を順次販売しています。詳細はこちら。
1 はじめに
現在、「都庁(公務員)に転職したい」又は「都庁(公務員)に興味を持っている」という社会人の方も多くいらっしゃると思います。一方で、「都庁に転職したいけど…」と、足踏みをされている方も多いのではないでしょうか?
「転職したいけど…」の後は、それぞれ事情は異なりますが、概ね
- この年齢で入れるのだろうか?
- 試験の難易度が高くて無理なんじゃないか?
- 仕事を辞めなければ受からないんじゃないか?
- 転職組は出世できないのではないか?
- 都庁は激務なのか?
- 年収は上がるのだろうか?
的な悩みを持つため、足踏みをしてしまう方が多いと思います。
今回は、実際に民間企業や他の自治体からの転職を経験した都庁職員の実際の声を踏まえて、転職希望者の方が多く持つ疑問についてお答えしていきます。
すでに都庁への転職に向けて動き出している方は、読み物としてお楽しみください。都庁が公式に発表しているQ&Aより、生々しいリアルな感覚がわかると思います(笑)
2 転職希望者の疑問に回答
今回、都庁への転職を希望している方が興味を持つテーマについて、転職をして入都してきた職員5名に話を伺いました。それぞれの方の前職は、流通業・SE・メーカー・金融業・地方公務員です。また、試験区分は、1類A方式1人、1類B新方式2人、1類B一般方式2人で、年齢は全員20代です。以下、それぞれの方の回答を踏まえた上で、様々な疑問・質問について解説していきます。
※厳密なインタビューではなく世間話の延長で行ったものなので、すべての質問について全員の回答を得たわけではありません。また、それぞれの個人的な事情・感想も多分に含みますので、あくまで参考程度にご活用下さい。
2-1 都庁に転職できる人の条件(年齢)は?
年齢に絞ると、次のとおりです。
- 1類A方式:24歳~31歳
- 1類B方式:22歳~29歳
- キャリア活用(経験者採用):~59歳以下(ただし、民間企業で一定以上の職務経験が必要)
※その他区分もありますので、詳細はこちらをご確認下さい。http://saiyou2.metro.tokyo.jp/pc/selection/rw02/
※受験年齢と、実際にどの年齢層が多いかについては、都庁採用試験と年齢の記事で詳細に解説しております。
なお、キャリア活用枠は、前職のスキルを活かした経験者採用になりますので、事務職という広い枠での採用ではありません。
すごくざっくりですが、「20代ならば誰にでもチャンスがある」と考えていただいて結構です。
2-2 残業は多いか?
当然のことながら、残業時間が気になる方も多いと思います。残業時間については、都庁職員から見た残業で詳細に解説しております。
転職経験者の方に残業時間について聞いてみたところ、そもそも前職が激務だったため都庁に転職してきた人が多く、総じて「残業は少ないと思う」と言っていました。部署によってバラバラなので、月100時間を超える部署も普通にあるんですけどね(笑)
これは個人の事情により異なりますが、民間の忙しい企業・ブラック企業に比べると、都庁の残業時間は概して少ない方なのかもしれません。
反対に、前職でシフト制の仕事に従事して残業を経験したことのない人からすれば、都庁は残業が多いという感想を持つでしょう。
2-3 給料はよいのか?
これは難しい問題です。
まず、上の5人に確認をしたところ、次のとおりの結果でした。
- 流通業・メーカー・SEの3名:年収↓
- 金融1名:年収↑
- 地方公務員1名:変わらず
都庁の年収の実態については、都庁職員の年収で解説しております。
メーカー・SEの方は、年収が100万円以上ダウン、流通業の方は、年収が50万円程度ダウンしたとのことです。
一方、金融の方は、エリア職だったこともあり、年収が100万円程度アップしたとのことでした。
なお、他の自治体に勤めていた方は、ほぼ変わらないと言っていました。地方公務員の給料は、地域手当(物価水準等に照らして、自治体により特別に加算される割合)以外はほぼ変わらないので、これは当然の結果でしょう。
※東京都の地域手当は地方自治体で最も高く、令和2年現在、給料の20%です。しかし、東京は相対的に家賃や物価が高いため、地方で公務員になる方が、相対的に裕福とも考えられます。
この5名以外でも、筆者が今までに出会った転職経験者の話を思い出すと、「年収が減った」と答えた人の割合が明確に高かったです。
しかし、それは都庁の年収が低いというよりも、「前職が忙しくて多くの残業代が出ていた」というケースが多いです。
反対に、無職・フリーターから転職してきた人は、当然ながら劇的に年収が増加します。
結果、「その人が置かれている環境による」としか答えられないのが心苦しいですが、都庁職員の年収と比較することで、給料が増えるか否かのイメージができると思います。
2-4 転職して入都する人は多いか?
近年、新入職員のうち、転職者の割合が高くなってきています。あくまで筆者の体感ですが、新入職員全体のうち、4~5割が前職あり(無職・フリーター含む)です。筆者が入都した10年程前では、大学新卒ストレート組が明確に多かったので、時代の変化を感じています(笑)
なので、「転職者は馴染めないのでは?」というような不安を持つ必要はありません。入都後も、同期との会話は年齢に関わりなくすべてタメ口(キャリア活用組は除きます)の文化なので、大卒組と転職組で心の距離を感じる機会も少ないです。入都者の職歴・年齢については、都庁採用試験と年齢の記事で詳細に解説しております。
2-5 仕事を続けながらの受験は可能か?
結論から先に述べると、「その人が置かれた状況と試験区分による」となりますが、これでは当たり前すぎて答えたことになりませんので、以下詳細に解説していきます。
多くの方が気になると思いますし、非常に難しい質問です。しかし、明確な傾向は出ています。
話を伺った5人のうち、1類B新方式を受験した2人は仕事を続けながらの受験、1類A方式・1類B一般方式を受験した3人は仕事を辞めてからの受験です。上の5人以外の転職者を見ても、この傾向が当てはまります。
やはり、1類A方式・1類B一般方式の受験には専門記述・教養論文の勉強が必要なため、働きながらの勉強時間の確保がどうしても難しいと思います。もっとも、働きながら1類A・1類B一般方式を突破してくる転職者も一定数いるため、一概には言えません。
例えば、仕事が毎日定時で終わり、夜は自由に時間が使えるというタイプの方でしたら、働きながらの合格も十分に可能だと思います。心身共にハードなのは間違いありませんが(笑)
反対に、毎日終電レベルのブラック企業で働いている方は、そもそも勉強時間を確保することができないでしょう。
こういった理由から、1類A方式・1類B一般方式で合格する方は、仕事を辞めて受験する場合が多いです。
一方、1類B新方式は専門記述・教養論文がないので、準備に要する時間が明確に少なくて済みます。仕事を辞めなくても十分に合格することができる試験科目なのです。
「それなら、転職者は絶対に一般方式よりも新方式を受けるべきじゃないのか?」と考える方が多いと思いますが、そうとも言い切れないのが難しいところです。新方式はプレゼン・グループワーク等がメインのため、得意な人にとっては良いのですが、苦手な人にとっては対策が難しい場合があります。また、採点基準が明確でないため、「これだけやれば絶対に受かる」という基準がない点が難点です。
その点、一般方式は専門記述を必死に勉強し、教養論文の型を詰め込めば、かなりの確率で試験を突破することが可能です。
上の5人のうち、メーカー出身の方も、「新方式は博打だと思ったから、諦めて一般方式で確実に行こうと決めた」と話をしていました。仕事を辞める・辞めないは非常に悩ましい選択だと思いますが、転職者の話を聞くと、「それほど仕事が辛くないなら、辞めないでもよいのでは?」と言う意見が多かったです。
一方、「絶対に入ると決めたなら、仕事を辞めて試験に集中した方がよい」という意見もありました。
あくまで筆者の個人的な見解ですが、仕事を辞めるか悩んで答えがでなかったら、仕事を続けながら1類B新方式を受験するのが現実的にベターな選択なのかな、と思います。仕事を辞めて背水の陣で受験に臨み、散っていった受験生も多くいるのが現実ですので…。
もちろん、「絶対に受かってやる!」という気概を持ち、仕事を辞めて勉強に集中することもありだと思います。
2-6 無職状態での受験は不利か?
上の疑問とも少し関連しますが、「仕事を辞めた場合、面接で不利なのではないか?」「職業の空白期間はない方がよいのではないか?」という疑問を持たれる方も多いと思います。
結論から述べると、無職か否かは合否に一切関係ありません。
都庁外部の方からすると、「そんなわけないだろ」「面接で印象が悪すぎるだろ」と思われる方も多いと思いますが、受験において受験生の特性(無職か否か、高学歴か否か等)は全く考慮されません。仕事を辞めて数年間海外を旅していたという職員も見たことがありますが、そういう人でも無事に入都できている証です。
もちろん、面接の際に無職である理由・前職を辞めた理由は確実に聞かれます。しかし、それに丁寧に答えることができれば、無職であるとか、空白期間があるかとかは一切考慮されません。同じく、就職浪人も全く不利にならないので、都庁受験に失敗して、次の年にリベンジをするために大学を留年する必要もありません。卒業しちゃって大丈夫です。
ただし、他の自治体や国、民間企業を受ける場合は影響があると思いますので、そこはご注意下さい。
筆記試験を突破し、面接で的確な受け答えができれば、現在の事情に関わらず都庁に合格することができます。
※ここは非常に多くの人が誤解しているところですが、都庁の受験に際し、現在置かれている状況は全く考慮されません。
2-7 前職を短期間で辞めてしまったが、不利か?
最近は少なくなりましたが、「入社したら3年間は絶対に辞めるな」という風潮が未だに存在する会社もあると思います。そういった会社に勤めている方からすると、「短期間で仕事を辞めたら、面接で極めて印象が悪いのでは?」と心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これは2-6で解説したとおりで、都庁の受験においては、受験生の特性は一切考慮されませんのでご安心下さい。実際、前職の在職期間が1年未満という職員も多く存在しています。前年の試験で都庁に落ちて、併願していた他自治体にとりあえず入って、次の年の試験で都庁に合格し、その自治体を退職して入都してくる職員もいました。他自治体からしたら「ふざけるな!」という感じでしょうが(笑)
在職期間は気にせずに、都庁に転職したいと思ったらすぐに行動を開始しましょう。
もちろん、極めて短期間(入社後2~3ヵ月とか)で退職している場合、その理由を面接で詳しく突っ込まれます。しかし、丁寧に答えることができれば、何も問題ありません。
2-8 特にスキルがないが大丈夫か?
仕事はしているけれど、「特にスキルがない」「スキルが付く仕事に就いていない」と悩んでいる人も多いと思います。
結論から述べると、スキルがなくても全く問題ありません。
都庁においては、人事配置において前職のスキルを考慮される場合はあまりありません。銀行で数年働いて金融の知識のある人が、都立公園管理の事務所に配属されることも普通にありますし、元SEが、電話応対がメインのアナログの部署に配属されることもあります。
もっとも、ごく稀に、スキルを考慮される場合もあります。
例えば、法科大学院出身者は、優先的に総務局の法務課(都庁における訴訟を担当する課)に配属されます。日常の業務で高度に専門的な法律の知識を使うため、全くの法律の素人は使い勝手が悪すぎるからです。
逆にいうと、スキルが考慮されるのは、このような極めて専門的なスキルを要する職場に限ります。都庁に限らず公務員の仕事は独特な特徴を持っていますので、今現在何のスキルが無くても、都庁で仕事をしていれば勝手にスキルが身に付きます。ただし、公務員の世界でしか通用しないスキルではあります(笑)
2-9 どういう業界からの転職者が多いか?
これは本当にバラバラです。特にどの業界からが多いという特徴はないです。筆者の知っている人をざっと思い出してみても
- メーカー
- 地方公務員
- 国家公務員
- 教師
- 金融
- 物流関係
- 食品関係
- サービス業
- SE
- アルバイト(フリーター)
などなど、特に一貫性がありません。元、「売れない俳優」という方もいました(笑)
前職に共通点はありませんが、あえていうならば、「忙しい仕事」に就いていた人が多い印象です。
3 転職経験者の感想
都庁への転職を希望している多くの方が持つ、疑問・質問について解説してきました。
ここでは、上の5人に限らず、実際に転職して入都してきた職員からの感想を、過剰書きで紹介していきます。メリット・デメリットで矛盾する回答もありますが、それぞれの職員のリアルな声ですので、参考になると思います。
メリット
- 都庁に転職して良かった
- なんだかんだ、公務員は環境がよい
- ぶっちゃけ、仕事が楽
- 給料が上がった
- 定時で帰れる
- 転勤がない
- 異動が多いので、嫌な人もすぐいなくなる
- 毎年昇給する
- 無職だったのに入れてくれた
- 社会的なステータスが高い(地元の親が喜んでいた)
デメリット
- 給料がかなり下がった
- 前職より忙しくなった
- 公務員の独特なストレスが辛い
- なんで世間からこんなに叩かれるの?
- やる気のない同僚が多くてウザい
- 法令、規則が細かすぎ
- やる意味のない仕事が多すぎ
- 30歳近くの入都では、出世が不利
- 上司が無能すぎる
- 物事決めるのに時間がかかりすぎ
このような感想がありました。
4 まとめ
今回は、都庁への転職を考えている方に向けて、実際に転職をして入都した職員の声を踏まえて、質問・疑問を解説してきました。
かなりリアルな声をお伝えしましたので、都庁の具体的なイメージを少しでも持っていただけると幸いです。
なお、ネガティブな感想を述べる人もいますが、転職者は概して、「都庁を辞めたい」とは言いません。
「都庁の仕事はつまらない、辞めたい」と言うのは、新卒ストレート組であることが本当に多いです。都庁に転職する苦労を知っているからかもしれませんが、民間と比べて都庁が素晴らしい職場であることの一つの証とも言えるかもしれません(笑)
ぜひ、都庁の転職に向けて、一歩を踏み出してもらいたいと思います!
コメント
[…] ※1類B新方式については、都庁に転職したい方への中でも解説しております。 […]