「都庁採用試験と年齢」の記事で、都庁受験の合否に年齢の影響はないことを解説しました。
しかし、たとえ試験に合格して入都できたとしても、「受験資格ギリギリの年齢で入都しても出世できないのではないか?」「偉くなれるのは新卒ストレート組だけではないのか?」という疑問を持たれる方も多いと思います。
今回は、そんな疑問に答えるべく、「合格後の昇進・出世に年齢の影響はあるのか?」について詳細に解説していきます。
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1 はじめに
「採用試験に年齢は関係ないとしても、受験資格年齢ギリギリでは、たとえ合格しても昇進・出世できないのではないか?」
現実問題として、このような疑問を持たれる方が多いと思います。
最近の若者は昇進・出世したがらない、という話をよく聞きますし、実際に都庁内でも管理職試験を受けて幹部職員を目指す職員の割合は確実に低下してきています。
しかし、それでも上を目指す職員は存在していますし、受験生の中にも、「都庁に入るからには昇進・出世したい!」と考えている方も多いのではないでしょうか。
2 出世に年齢は影響するのか?
それでは、入都時の年齢はその後の昇進・出世に影響するか否かについて解説していきます。
結論を先に述べると、「昇進・出世に入都年齢は影響する」となります。
しかし、ここで注意しておきたいのが、「どこまで目指すことを出世というかのか?」が人によって違うということです。出世について分析するには、ここをはっきりさせておかなければなりません。
2-1 都庁職員の序列
都庁の職員の序列は、大まかに言って次のとおりです。
- 副知事
- 局長級
- 部長級
- 課長級
- 課長代理(係長)級
- 主任
- 主事
※課長代理以上は、役職によって名称が異なるため、「級」で一般化しています。「理事」や「〇〇事業所長」といった名称もありますが、名称に関わらず、基本的にはすべての役職は上の1~7のいずれかに該当します。
上記のうち、課長級以上(1~4)が管理職となり、いわゆる「幹部職員」といわれる存在です。
※厳密にいうと、1, 2は「特別職」という名称で管理職とは異なりますが、管理職とイメージしていただいて構いません。
反対に、課長代理級以下(5~7)は、実務のプレイヤーであり、いわゆる「一般職員」と呼ばれる存在です。
そういった意味でも、課長級と課長代理級の間に、大きな境界線があります。
2-2 都庁における出世のラインは?
都庁内部では、一般的には課長級以上に達すると、「出世をしている人」という認識がされます。
もちろん、これは人によって変わります。課長は通過点に過ぎないと考え、より上の職を目指している職員も多いです。
しかし、都庁職員の感覚としては、課長級に達することが、出世の一つのラインといえます。反対に、課長級に達しない以上、出世をしていると認識されることはありません。
2-3 副知事になるには?
自分の出世のゴールを「課長級」に設定しているならば、入都時の年齢は出世に全く影響しません。ちなみに個人差はありますが、都庁職員として平均的な能力を有している職員ならば、昇進試験と仕事を頑張っていれば、定年退職までに課長級には到達できます。
ゴールを「部長級」に設定する場合も、それほど影響しないと言ってよいでしょう。ちなみに部長級まで到達するのはかなり大変です(笑)
一方、目標を高く、ゴールを「副知事」に設定しているならば、入都時の年齢は極めて大きなファクターになります。1類B方式で22~23歳で入都した職員や、1類A方式で24~25歳で入都した職員が極めて有利なのに対し、採用試験の区分に関係なく、20代後半や30代前半で入都してきた職員は、副知事まで出世する可能性は絶望的に低いです。
3 都庁の出世の仕組み
これは、都庁の昇進・出世の仕組みに関係しています。ご存知の方も多いかもしれませんが、都庁では、昇進・出世をするには必ず受けなければならない二つの試験があります。
3-1 主任試験と管理職試験
詳細は改めて解説する予定ですが、都庁には「主任試験」と「管理職試験」という二つの試験が存在していて、それぞれを突破しないと、どんなに優秀な職員でも上に上がれない制度になっています。
※主任試験:7. 主事から6. 主任に昇任するための試験
「管理職試験」には「管理職A試験」と「管理職B試験」の2パターンがあり、「管理職A試験」は若手職員の中から幹部を選抜するための性質のもので、受験資格も6. 主任職員に限定されています。
一方、「管理職B試験」は、経験を積んだ課長代理級職員の中から、課長級を選抜する性質の試験です。
※管理職A試験:6. 主任から5. 課長代理に昇進するための試験(ただし、4. 課長級への昇進がほぼ約束されている)
※管理職B試験:5. 課長代理から4. 課長級に昇進するための試験
そして一度課長に昇進すると、その後は昇進試験はなく、実務の評価と経験によって、部長級・局長級と昇進していきます。部長になるために経験しなければならない課長の年数は大体決まっており、最も優秀な課長でも、最短で7~8年かかります。
大半の課長は、課長の状態で定年退職を迎えます。というよりも、部長まで昇進できる課長はほんの一部です。
3-2 エリート職員のモデルケース
具体的にイメージを持ってもらうため、エリート職員のモデルケースを紹介します。ここで紹介する職員は、同年入都(5~600人)の事務系の中で、トップスピードの出世をしている人です。
※年齢はすべて年度末の満年齢を基準にしています。
- 23歳:入都(1類B方式)
- 27歳:主任試験合格
- 28歳:主任昇進
- 29歳:管理職A試験合格
- 30歳:課長代理(係長)級昇進
- 35歳:課長級昇進
- 43歳:部長級昇進
- 51歳:局長級昇進
- 58歳:副知事昇進
この職員は、主任試験に一発で合格し、その後の管理職試験も一発合格しています。さらに勤務成績が極めて優秀で、課長、部長と最短で昇進しています。この場合、最短で51歳くらいで局長級に昇進することができます。その後、さらに実績が認められた場合、58歳くらいで副知事に昇進する道も生まれます。
このような出世をできる人は、同期入都の中で最も優秀な一人です。副知事のポストの数も決まっています(令和2年現在、4人)ので、同期に極めて優秀な職員が二人いた場合でも、どちらかは副知事まで辿り着けず、脱落することになります。
参考までに、平均的な能力の職員が出世を目指した場合を紹介します。もちろん、人によってバラバラではありますが、概ね次のような感じになる場合が多いと思います。
23歳入都→30歳主任昇進→35歳課長代理級昇進→45歳課長級昇進(管理職B試験)→運がよければ、50代半ば~後半で部長級昇進
3-3 入都時の年齢が高いと?
上の例は大卒ストレートで入都した極めて優秀な職員の事例ですが、仮にこの職員の入都時の年齢が5歳高かったらどうなるでしょうか?
副知事昇進まで(局長級在籍時)に、60歳に達し、定年退職することになってしまいます。つまり、定年退職という制度がある以上、どんなに頑張っても副知事までは届かないのです。
また、局長級をめざす場合でも、入都時に28歳だったとしたならば、昇進試験もすべて一発合格、勤務成績が極めて優秀だったとしても、局長級に昇進するのは最短で56歳です。主任試験・管理職試験を2~3回失敗したり、課長・部長の在籍時にトラブルに巻き込まれ、評価が少しでも落ちてしまったら、挽回するのには時間が足らなさすぎます。
反対に、23歳で入都していれば、3~4年昇進試験で足踏みしたとしても、定年までに局長級にたどり着ける可能性は十分にあります。
このような理由から、定年退職制度がある以上、入都時の年齢は出世に極めて大きな影響を与えます。
これはあくまで年齢のみで区切ったもので、実際の出世は当然ながら職務成績によって決まっていきます。しかし、比較的高年齢で入都をした場合、制度上の問題として副知事には届かず、また局長級に達するのも非常に難しいということは理解しておきましょう。
4 まとめ
「転職者だけど、できるだけ上を目指したい」と考えている方には、厳しい現実を伝えてしまったかもしれません。しかし、定年退職の年齢が決まっている現状では、仕方のない制度と割り切るしかありません。
もしかしたら、将来的に定年制が廃止され、能力があれば何歳で入都しても副知事を目指せる可能性が生まれるかもしれません。部長級や課長級を目指すのならば、30歳を過ぎてからの入都でも十分可能なので、目指せる限りの一番上を目指すのも良いと思います。
大学生の皆様には、是非とも副知事・局長を目指して頑張ってもらいたいと思います(笑)
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