都庁職員の昇給について

 「都庁職員って、どのくらいの感じで昇給していくの?」

 こういう疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。都庁の給料表は公表されていますので、調べること自体は誰でも可能ですが、実際の昇給の額について具体的なイメージを持っていない方が多いと思います。筆者は持っていませんでした(笑)

 今回は、そんな都庁職員の昇給事情について解説していきます。

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都庁の昇給は一律か?

 「公務員って、若いうちは能力関係なく、昇給は一律なんでしょ?」

 筆者が入都した際、筆者の親はこんなことを言っていました。世間では筆者の親と同じように思っている方もいらっしゃると思いますし、実際に自治体によっては、若手職員の昇給額に差を設けていない所もあるかもしれません。

 では、都庁ではどうでしょうか?

 結論は、「勤務成績によって昇給額に差がある」です。しかし、この昇給の幅の差が、微々たるものなのが現実です。まず、勤務成績がどのように昇給に影響するかを見ていきましょう。

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勤務成績による昇給ランク

 都庁の昇給は、毎年年度末に一律で行われます。年度末である3月末頃になると、自分の課長から「昇給通知書」という書類が渡され、そこに〇号昇給と書かれています。

※都庁の給料は、すべて「号」という単位で表されています。

 1類B合格者・大学新卒の方の場合、初年度の給料表は1級29号が適用となります。この「昇給通知書」には〇号昇給と書かれているだけで、具体的に自分がどのような勤務成績で、どのように評価されているのかをここから知ることはできません。ちなみに、どのように昇給するかについては、以下のとおり、総務局が公表しています。

https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/03jinji/pdf/kousyou/291101teian1-2.pdf

 昇給内容については、この1枚にすべて記載されているのですが、内部職員でないとさすがに読みづらいと思いますので、解説していきます。

 まず、新人職員・若手職員が該当するのは、表の1番下の、「一般職層」です。ここを見ると、昇給の付与率の目安が記載されています。要約すると、次のとおりです。

  • 6号給昇給(成績最上位)…職員の5%
  • 5号給昇給(成績上位)…職員の25%
  • 4号給昇給(成績中位)※4号~なしで職員の70%
  • 3号給昇給(成績下位①)
  • 2号給昇給(成績下位②)
  • 1号給昇給(成績下位③)
  • 昇給なし(成績最下位)

 3号給以下は成績下位ということですが、普通に出勤していれば、どれだけ仕事ができなくても、基本的に4号昇給します。3号給以下は、遅刻をした・懲戒処分を受けた・病休を取得してフルに出勤しなかった等、特別な事情がなければ基本的に行われません。

 普通に仕事をしていて3号給昇給にされてしまった場合、課長が自分を死ぬほど嫌っているとか、よほどの事情があると思います(笑)現実的な話として、理由もなく3号給昇給にした場合、その決定をした課長自身が部長や人事から責められることになるので、そのような意地悪をすることはありえません。

 一方、6号給昇給をする人は、職員全体の5%なので、極めて稀な存在です。そして本庁は出先事務所よりも勤務成績に優遇されるため、どこの局においても出先事務所に配属された時点で、6号給昇給をする可能性は限りなくゼロに近くなります。

 これに対し、5号給昇給をする人は職員全体の25%なので、周りから見て「この人優秀だな」と思われている人は、大体5号昇給をしていると考えてよいでしょう(笑)

 しかし、都庁内部では一部の職員を除いて、職員同士であまり昇給の話をする文化がないため、同期でも周りが何号昇給しているかを知る機会は少ないです。

 4号給昇給は、6号・5号給昇給を除く一般職員です。ただ、ここも非常に役所的な部分が強く出ているのですが、毎年5号給昇給を取り続ける職員や、反対に一度も5号給昇給を取ったことのない職員は少ない印象です。特に出先事務所では、ある程度公平に、何年に一回かは自分に5号給昇給の機会が回ってくる可能性が高いです。「勤務成績を平等にする意味なくね?」と筆者は感じていますが、それが都庁の現実です(笑)

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実際の昇給額

 都庁で採用されている給料表は、次のとおり人事委員会が公表しています。

https://www.saiyou.metro.tokyo.lg.jp/saisin_kyuuryouhyou.html

 こちらも見方が難しいと思いますので、簡単に解説します。

 若手事務職員の給料表は、行政職給料表(一)の1級職に該当するところ、1類Bで合格した新入職員には29号が適用されるため、初任給の基本給は「184,100円」になります。(※HPやパンフレット等で公表されている初任給は、この金額に地域手当20%が加算された額です。)

 この新人が、年度末に4号給昇給をした場合、次年度の基本給は33号給が適用され、「192,500円」になります。つまり、基本給で8,400円の昇給です。

 これが5号給昇給の場合、10,400円の昇給となり、6号給昇給の場合、12,300円の昇給です。新人職員でいきなり6号給昇給をする人はまずいませんが、理論上は4号給昇給の人との差額は月額3,900円です。地域手当20%を考慮すると、月額約4,700円の差が生じます。

 ここにボーナス分を加味し、年間に換算すると、約7~8万円程度の年収の差が生じることになります。

 このように、最も優秀な職員と、最も仕事のできない通常職員(懲戒処分等を受けていない)の年収差が7~8万円程度しかないため、優秀な人ほど給料体系に不満を抱えているケースが多いです。ある意味では、非常に公務員らしいともいえるでしょう。筆者の周りを見ても、6号給昇給や5号給昇給について、「年収が上がって嬉しい」と実感している都庁職員は少数派です。それよりも、「優秀だと評価された」ことに満足をする人が多いです。

 そういった意味では、職員のモチベーションを上げるには、役だっている制度なのかもしれません。個人的には、「もう少し昇給幅に差をつけてもよいのでは?」と思っています。

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