都庁試験の勉強をいつからするか?

 「都庁を受験したいけど、どれぐらい勉強すればいいの?」「合格している人はいつ頃から勉強しているんだろう?」

 都庁受験を考えている人は、一度は考えたことがある疑問だと思います。今回は、「採用試験の対策はいつ頃から始めればよいのか?」について、現役職員や筆者の体験を元に詳細に解説していきます。

※本ブログチームでは、平成元年~令和3年までの過去問の解答例と解説を順次販売しています。詳細はこちら

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1 はじめに

 都庁の採用試験は、一般的に難関試験と言われています。都庁を目指したいと考えている人の中でも、「あまりに勉強がハードだったら諦めよう」と考えている方もいると思います。また、「周りに都庁を目指している人がいないため、そもそもどれだけ勉強すればよいか全く目途が立たない」と感じている方もいるでしょう。

 今回の記事は、一人ひとりの前提条件を可能な限り細分化した上で、都庁合格に必要な勉強期間について解説していきますので、皆様の受験勉強の手助けになれば幸いです。

 なお、本記事では1類B一般方式に特化して解説していきますので、あらかじめご了承下さい。1類B新方式についても紹介したかったのですが、プレゼン・グループワーク等がメインの試験であり、ほとんどの転職者が「そもそもまともに勉強してない」と話をしていることから、諦めました(笑)

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2 都庁採用試験の特徴

 都庁の採用試験試験では、筆記試験の科目として、一般教養専門記述教養論文の3つがあります。それぞれ合格点を取ることが難しく、しっかりとした対策をしなければ到底突破することのできない試験です。

 それぞれの科目の特徴については採用試験の記事で詳細に解説しますが、簡単に紹介すると、次のとおりです。

  • 一般教養:マークシート式の40問択一試験。
    • 他自治体と比べても難易度は決して高くないが、足切り点数が設定されている。足切り点数を超えないと、専門記述・教養論文の採点がされず、無条件で不合格となる。足切りは23~25点前後の年が多いが、年度によっては30点近くになることもある。教養試験に苦手意識のある人は、安定して25点を取るのもかなり難しい。
  • 専門記述:1問600~1000字程度の記述問題(3問選択)
    • 他自治体のほとんどが択一試験を導入しているのに対し、都庁の専門試験は独自の記述式を採用している。試験方式が独特のため、都庁向けの記述用対策をしていなければ歯が立たない。
  • 教養論文:1問1000字~1500字程度の記述問題
    • 課題提示型の小論文。他自治体と比べても難易度は高くないが、配点が最も高いため、教養論文で大きなミスをしてしまうと合格することが極めて難しくなる。

 このように、3つの試験はそれぞれ特徴があるため、それぞれに特化した対策が必要です。そのすべてをしっかり勉強しようとすると、必然的に莫大な時間がかかることになります。

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3 合格者の勉強期間

 では、合格者はどれぐらいの期間勉強をしているのでしょうか?  まずは、都庁が公表している数値から見ていきましょう。

3-1 都庁が公表している数値

 都庁は、「都庁ナビゲータ制度」という、若手職員による受験生に対する相談制度を導入しています。都庁を目指している皆様の中では、実際に利用された方もいらっしゃるかもしれません。  その都庁ナビゲータの紹介HPで、ナビゲータを務める若手職員の勉強期間を公表しています。

※http://www.saiyou2.metro.tokyo.jp/pc/talk/

 HPのデータを抜粋すると、次のとおりです。

※事務職のみ

  1. 1か月以内:4%
  2. 1~3か月:11%
  3. 3~6か月:18%
  4. 6~9か月:23%
  5. 9~12か月:19%
  6. 12~18か月:20%
  7. 18~24か月:5%

 最も多い層は、6~9か月及び12~18か月の勉強期間ですが、3. -6. の期間が20%前後とほぼ同じ割合で並んでいます。6か月以内の勉強期間の職員が30%以上もいる一方、18か月以上勉強している職員は5%しかいません。1年以下の勉強期間の方(1. -5. 合計)が、全体の75%になります。

 この結果を見て、「1年以下の勉強で大半が合格できるんだな」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 しかし、1類B一般方式を目指す方は、この結果を真に受けてはいけません。なぜなら、ナビゲータには1類B新方式の職員が多く含まれているからです。

 1類B新方式は、平成25年度に初めて導入された、基本的に社会人の方を対象とした試験方式です。プレゼン・グループワークを試験科目に採用している一方、専門記述と教養論文がないのが特徴です。簡単に言ってしまえば、一般教養以外はいわゆる「勉強」をする必要がないのです。

※1類B新方式については、都庁に転職したい方への中でも解説しております。

 そして、1類B新方式で入都する職員の割合は、次のとおり、飛躍的に上昇してきています。

  • 平成25年度採用予定者数
    • 1類B一般方式:400名
    • 1類B新方式:50名
  • 令和元年度採用予定者数
    • 1類B一般方式:290名
    • 1類B新方式:100名

※詳細は、東京都職員採用のHPで公表されています。

 ここで、2~3年前のナビゲータの勉強期間と比較してみましょう。(現在では公表されていません)

※事務職のみ(2~3年前データ)

  1. 1~3か月:4%
  2. 3~6か月:18%
  3. 6~9か月:20%
  4. 9~12か月:24%
  5. 12~18か月:24%
  6. 18~24か月:4%
  7. 24か月以上:6%

 最も多い層は、9~12か月及び12~18か月の勉強期間で、全体の半数程度がいます。一方、6か月以内の勉強期間の職員が20%程度しかいません。18か月以上勉強している職員は10%と、現在のデータよりも全般的にかなり長い期間勉強をしていることになります。

 これはまだナビゲータに1類B新方式の合格者が少なかった時代のデータであるため、1類B一般方式を受験する皆様は、こちらのデータを参考にした方が実態に合っていると思います。

 そして、このデータは、同期や先輩・後輩と情報交換をした筆者の体感とも相当近いものがあります。

 筆者自身は、大学3年の4月から勉強を開始したため5. に該当しますが、筆者の大学時代を振り返っても、3年の春~夏あたりから公務員試験の勉強を開始する学生が最も多かったです。

3-2 他人の勉強期間は参考にならない?

 と、自ら合格者の勉強期間を解説しておいて言うのも何ですが、他人の勉強期間は全く参考になりません(笑)

 上記の学習期間は、「大体みんなこれぐらいで合格している」という目安とする程度にとどめてください。

 では、なぜ全く参考にならないといえるのでしょうか?

 それは、受験生一人ひとりによって、前提条件が全く異なるからです。

 例えば、「1~3か月で合格する4%の人は天才なんじゃないか?」という風に感じる方もいらっしゃるかと思います。筆者も、入都時はそのように思っていました。

 しかし、例えば法科大学院を卒業しているなど、都庁受験向けに特別な対策をしなくても、元から都庁に受かる程度の知識を持っている人がいます。

 また、法学部でしっかり法律や行政学、政治学を勉強してきた人も、都庁受験に必要な基本知識はすでにインプットされているため、都庁の問題形式に慣れるだけで合格することが可能です。

 このように、勉強開始前から、都庁受験に極めて有利な状態にいる人達が少なからず存在しているのです。

 そういった合格者から、「自分は3か月しか勉強してないけど受かったよ。」という話を聞いても、他の受験生と前提条件が違うため、全く参考にならないのです。短期合格者は、元から頭が良い・天才というわけではなく、都庁受験に有利な前提条件を備えていたという場合がほとんどだと思います。

 こういった理由から、合格者の勉強期間を真に受ける必要はありません。

 特に、1類B新方式の人の勉強期間だけを真に受けて、「予備校に行かずに1か月の勉強でも合格するのか」と考えてしまったら、1類B一般方式では不合格直結です(笑)

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4 最初に絶対にやるべきこと

 ここまで読むと、「結局の所、自分はどれぐらいの期間勉強すれば合格するの?」と感じる方が多いと思います。

 これから、それぞれの前提条件を踏まえた上で、勉強を開始すべき大まかな目安時期を解説していきますが、その前に、絶対にやるべきことを最初に紹介します。

 都庁の受験を考える人は、勉強を開始する前にやらなければならないことがあります。

 それは、「本番と同じ時間で、一般教養の直近の過去問を解くこと」です。

 これを必ずやるべきです。これは、都庁だけでなく、他の公務員試験を受験する際にも同様です。なぜ、直近の過去問を本番と同じ時間で解くこと、が必要なのでしょうか?

 「まだ勉強始めてないのに、過去問を解いても意味ないでしょ?」「解けるわけないじゃない?」という声が聞こえてきそうですが、それは違います。勉強を始める前に、一般教養試験で何点取れるかを知っておくことによって、今後の勉強計画が大きく変わってくるからです。

 公務員試験の勉強開始前に都庁一般教養の過去問を解いて、25点以上を取れるようなら、その人は教養試験の対策をほとんどしないで本番に臨むことができます。専門記述と教養論文だけを集中して勉強すればよいため、かなり短い期間で合格することが可能となります。教養試験対策は、試験直前期に時事問題を詰め込めば、確実に足切り突破をできると思います。

 また、少し点数は下がりますが、勉強開始前の時点で18点以上を取れる人は、苦手な分野を集中して勉強した上で時事問題を詰め込めば、本番までに7~8点程度上げることは容易です。18点以上を取れる人は、英語や資料解釈など、基本的な問題を解ける力は備わっていると思いますので、苦手分野を集中的に勉強すれば、比較的短い期間で合格点を取ることが可能となります。一般教養にそこまで苦戦することはないでしょう。

 一方、17点以下の点数の方は、集中して教養対策を行う必要があります。17点以下の方については、例えば「数的処理をやって、時事を詰め込めば受かるかな」という状態ではなく、「数的処理と判断推理と、社会をやらないといけない」など、複数科目を集中的に勉強する必要があるからです。このような方は、必然的に勉強期間が長くなります。

 さらに、教養試験で12~13点程度しか取れない方は、長期戦になることを覚悟する必要があります。その方は、英語などを含め、全体的に教養試験を解く実力が足りない状態にあると思われますので、専門試験の勉強はさておき、当面は教養試験の勉強に集中すべきです。

 このように、「勉強を始める前の時点で過去問を解いて何点取れるか」は、現時点での自分の実力を知る上で必須の作業です。ここで取れた点数によって、今後の勉強計画が大きく変わるので、絶対に最初にやりましょう。

 「1年分だと現在の正確な実力がわからないのでは?」と不安に思う方は、3年分程度を解いてみて、その平均点から自分の実力をチェックすることをお薦めします。

 都庁の過去問は、大手予備校から比較的安価で販売されていますので、最初に入手した上で一般教養を解いておきましょう。

 もちろん、専門記述は解かなくても大丈夫です。全く勉強していない状態では1行も書けないと思いますので、専門記述は問題文を読んで、「こんな事が聞かれるんだな」程度に把握おけば十分です。

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5 勉強開始の目安時期

 それでは、今回のメインである、「具体的にどの程度の勉強期間が必要なのか?」について解説していきます。

 なお、この記事では、「都庁を第一志望にしている人」を前提に話を進めていきたいと思います。その理由は次のとおりです。

 公務員試験受験生には、様々なタイプの人がいます。

 例えば、国家総合職を第一志望にしている人は、都庁の受験に集中している余裕はないでしょう。また、民間就職がメインで、保険として公務員試験を受けようとする方もいると思います。

 本当に色々な事情の方がいらっしゃるため、全員に当てはまる理想の勉強期間というものは存在しません。なので、あくまでも都庁を第一志望にしている人目線で話を進めていきたいと思います。

 国家総合職が第一志望の方については、どのように勉強すればよいか筆者にはわからないので、他の方のブログ等を参考にしてください(笑)

 では、これから勉強を開始する都庁第一志望の受験生は、どれぐらいの期間勉強すればよいでしょうか?

 いくつかのパターンに分けて解説したいと思います。あくまでも目安ということで、ご了承ください。

※勉強時間は、1日平均3~4時間、試験直前期は1日7~8時間程度を想定。教養試験の点数は、上で紹介した、勉強を始める前に時間を測って解いた直近の過去問の点数を目安にしています。

①教養試験25点以上、専門試験を大学で勉強している人

 大学入試の際にセンター試験で全科目の勉強をし、二次試験でも数学を勉強していた国公立大学の生徒に多いタイプです。勉強開始前から教養試験で25点以上を取れていれば、直前に時事問題を詰め込む以外、教養試験の勉強をする必要はほとんどありません。

 また、法学部や経済学部の学生は、専門記述のうち、憲法・民法・行政法・経済学・会計学・行政学・政治学などを大学で勉強しているため、専門記述の基礎知識を詰め込む必要性も少ないです。試験対策用に知識の整理をして、過去問の模範解答を読み込む等、都庁受験用の記述式に慣れるだけで合格に達することのできるレベルにあるため、勉強期間はかなり少なくて済むでしょう。中には、教養論文の対策を行うだけで、合格可能なレベルの人もいるかもしれません。

 このようなタイプの人は、3か月以内の勉強で十分合格可能だと思います。

②教養試験25点以上、専門試験を勉強したことがない人

 ①とタイプは似ていて、国公立大学の学生に多いパターンですが、専門試験をほとんど勉強したことない文学部や国際教養学部などの生徒に多いパターンです。

 ①のタイプとは違い、専門試験の勉強をゼロから行う必要があるため、それなりの準備期間がかかります。

 一方、教養試験についてはほとんど勉強をする必要がないため、専門記述と教養論文の勉強に集中することができます。

 このようなタイプの人は、6か月程度の勉強期間で十分合格可能だと思いますが、余裕を持ちたければ、大学3年の夏休みぐらいから始めるのがベターかもしれません。実際に、3年生の夏学期の期末試験・レポートが終わってから勉強を開始した、という内部職員も多いです。

③教養試験18点以上、専門試験を大学で勉強している人

 ①、②のタイプと違い、教養試験の対策を行う必要があります。

 教養試験のどこが苦手かにもよりますが、筆者の周りを見ても、数的処理が苦手が人が多いと思います。筆者自身もそうでした。ちなみに筆者自身は受験生時代、この分類に属していました。数的処理を集中的に勉強するとしたら、そこそこの時間が必然的にかかります。また、足切りが25点を超える年もあることから、その他の苦手分野も一通り勉強する必要があります。

 一方、専門試験を大学で勉強しているため、専門記述の勉強期間は短めで済むはずです。このようなタイプの人は、6~9か月程度の勉強期間で合格可能かと思います。教養試験の足切りが怖いため、②タイプの人よりも勉強期間は多めに確保する必要があると筆者は考えています。

④教養試験18点以上、専門試験を勉強したことがない人

 ③のタイプと違い、専門試験の勉強をゼロから行う必要があります。当然時間がかかります。

 また、教養試験もそこそこの時間を費やすことになるため、③のタイプよりは当然時間がかかります。

 このようなタイプの人は、9~12か月程度の勉強期間で合格可能かと思います。

⑤教養試験17点以下、専門試験を大学で勉強している人

 ④までのパターンと違い、教養試験を本格的に勉強する必要があります。17点の人は18点の人とそれほど変わりませんが、14~15点程度の得点だったとするならば、教養試験の科目を総合的に勉強する必要が出てくるため、かなりの時間がかかります。

 一方、専門試験の基礎知識はあるため、専門試験の勉強期間は短く済むと思います。

 このようなタイプの人は、12~15か月程度の勉強期間を見込んだ方がよいかもしれません。

⑥教養試験17点以下、専門試験を勉強したことがない人

 教養試験と専門記述、そして教養論文のすべてをフルに勉強する必要があります。当然時間はかかります。

 といっても心配する必要はなく、都庁の合格者の中にも、結構な割合でこのタイプの人がいます。私大文学部出身者などに多いタイプです。

 このようなタイプの人は、1年半以上の勉強期間が必要になるかもしれません。

⑦教養試験12~13点以下の人

 教養試験でこの点数が出てしまう人は、受験生の多くが苦手とする数的処理だけでなく、英語や判断推理なども不得意な場合が多いです。特に英語は一朝一夕で身に着くものではないため、教養試験の対策が非常に大変になると思います。

 このようなタイプの人は、まずは集中して教養試験の勉強を行うことをお薦めします。教養試験で20点程度を取れるようになってから、専門試験の勉強を始めるぐらいでもよいかもしれません。

 教養試験である程度の点数を取れなければ足切りをされ、専門記述や教養論文で挽回するチャンスすら与えられないため、必死で頑張りましょう。個人差もありますが、2年程度の勉強期間を覚悟した方がよいでしょう。

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6 まとめ

 以上、様々なタイプの受験生の勉強期間を解説しました。もちろんこれは目安なので、「こんなものか」という程度で参考にしてもらえれば幸いです。

 上の例は、毎日3~4時間の勉強時間を想定しましたが、毎日10時間の勉強をすれば、当然期間は短くなるでしょう。反対に、毎日1~2時間の勉強時間しか確保できなければ、勉強期間は長くなります。

 大切なのは、周りがどれだけ勉強しているかではなく、現時点での自分の実力を客観的に分析した上で、必要な勉強期間の目途を立てることです

 こうしてみると、社会人の方が仕事を継続しながら1類B一般方式を受験することは、なかなかにハードだなと感じます。仕事を続けたまま合格を勝ち取った同期を素直に尊敬します(笑)

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