都庁の花形部署について

「都庁に入都したら、花形部署で活躍したい!」

 そういった思いを抱いている受験生も多いと思います。

 今回は、そんな花形部署の実態について、都庁職員の目線で詳細に解説していきます。

 正直なところ、都庁外部の方、特に受験生にとっては「?」な部分も多いかもしれませんが、実際の都庁職員はそう考えてるのか、と読み物として楽しんでいただければ幸いです。

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1 はじめに

 「何をもって花形というか?」については、読者の方によっても多少考え方が異なってくるのではないでしょうか。そのため、「花形部署とは何か?」について最初に確認しておきたいと思います。

 多くの方は、花形部署というと、概ね次のような部署をイメージするのではないでしょうか。

  • 優秀な人が抜擢される部署
  • 皆が憧れる部署
  • 異動希望者が多い部署
  • 政策の立案に携わっている部署
  • 他の部署を統括する部署
  • 本庁の部署
  • 忙しいが、やりがいのある仕事を任される部署

 筆者もそうでしたが、花形部署というと上のようなイメージを持っている方が多いと思います。実際、出先事務所を花形と考えている人は少ないでしょうし、毎日定時で帰れるゆとりのある職場を花形と考えている人も少ないでしょう。

 そのため、上記の特徴を満たす職場を花形部署として解説していきたいと思います。

※なお、この記事は、あくまで花形部署のイメージについて解説するものであり、花形部署以外の職場を否定したりする意図は一切ありません。ご了承下さい。

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2 受験生がイメージする花形部署

 少しでも都庁の組織について調べたことのある受験生であれば、花形部署はどこだと思うか?という質問に対し、次の局のいずれかを答える方が多いと思います。

  1. 政策企画局
  2. 総務局
  3. 財務局
  4. オリンピック・パラリンピック準備局
  5. 産業労働局
  6. 都市整備局

 上の6つの局のいずれかを回答する学生は本当に多いです。筆者もそうでした(笑)

 そして、受験生だけではなく、実際に都庁に勤めている若手職員(1~2年目)も同じです。

 それは、6つの局に対し、次のようなイメージを持っている受験生・若手職員が多いからだと思います。

2-1 政策企画局のイメージ

  • 都知事直属の局であり、知事のサポートを行う優秀な職員が配属されそう
  • 最先端の政策を立案してそう
  • 少数精鋭で、各局のエースが選別されてそう
  • めちゃめちゃ忙しそうだが、仕事自体にやりがいがありそう
  • 新人はほとんど採用されないため、実力が要求されそう

2-2 総務局のイメージ

  • 都庁全体の総括をする局のため、優秀な職員が多そう
  • 都の政策のフレームワークを決定するなど、重要な役割を担っていそう
  • 人事権を持つ人事部があるので、都庁において絶大な権力を持っていそう
  • 「総務」という名称のため、他の局より一段上に立っていそう
  • 新人で配属される人が少ないため、実力が要求されそう

2-3 財務局のイメージ

  • 都の予算・財政を総括しているので、都庁の中で絶大な権限がありそう
  • 国では財務省が超エリートといわれているため、都庁でもお金を握っている財務局が最強だと思う
  • 激務に耐えられる優秀な職員が配属されてそう
  • 出世をするには、一度は通過する人が多そう

2-4 オリ・パラ準備局のイメージ

※オリ・パラは2021年への延期が確定しています。

  • 世界最大のイベントの企画・運営をしている局なので、優秀な職員を集めていそう
  • オリ・パラに携われる機会は一生に一度だと思うので、異動希望者がとても多く人気がありそう
  • 外国との調整も多いため、英語も話せる優秀な職員が多そう

2-5 産業労働局のイメージ

  • 都の経済対策や就業対策、観光振興などを行っているため、やりがいのある華やかな仕事が多そう
  • 業務の内容自体が面白そう
  • 特に受験生に人気がありそう

2-6 都市整備局のイメージ

  • 東京都の都市計画を策定しているため、優秀な職員を集めていそう
  • 仕事の結果が形に残る仕事なので、とてもやりがいがありそう
  • 業務の内容自体が面白そう

 こんなところではないでしょうか。

 あくまで筆者自身の経験と、周りの職員との会話を踏まえた各局のイメージですが、世間からのイメージとそんなにズレてはいないと思います。

 上に挙げた6つの局に対するイメージ自体は、決して間違ったものではありません。それぞれの局は、実際にイメージどおりの内容の業務を所管しています。しかし、その部分を切り取って、局全体を単純に「花形」といってしまってよいかというと、それは完全に別問題なのです。

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3 花形部署の具体例

 受験生がイメージしている花形部署は、受験生の間では確かに花形部署と思われているのかもしれません。

 しかし、実際の内部職員が考えている花形部署とは大きく異なっています。

 受験生は、実際に都庁内部での仕事経験がなく、リアルな職場を想像することが非常に難しいため、これは仕方のないことだと思います。筆者自身も入都するまで、もっと言ってしまえば、本庁に異動するまで、花形部署について受験生が持つイメージと同様の誤解をしていました。

 この記事では、都庁内での現状をイメージしやすくするため、実際の職場を例にして解説していきたいと思います。解説の素材としては財務局がわかりやすいと思いますので、財務局を例にして話を進めていきます。

3-1 財務局の組織について

 財務局は東京都全体の予算・財政を握っている枢要局であるため、花形部署だと考えている受験生が非常に多いです。また、入都1~2年目の若手職員も、同じように考えている方が多いです。

 同時に、激務の部署の代表格と考えている人も多い局ですが(笑)

 実際に、出世をしたい(管理職試験に早く受かりたい)若手職員は、財務局や総務局を異動希望先とするケースが多いのです。

※都庁内では、政策企画局・総務局・財務局の3局が「官房系」と呼ばれ、中心局として位置付けられています。

 では、そんな財務局ですが、どんな部があるのでしょうか。細かく見ていきましょう。

※東京都公式HPより(令和2年版)

  1. 経理部:総務課 ・契約第一課 ・契約第二課 ・検収課
  2. 主計部:議案課 ・財政課 ・予算第一課 ・予算第二課 ・予算第三課 ・公債課
  3. 財産運用部:管理課 ・総合調整課 ・活用促進課
  4. 建築保全部:工務課 ・技術管理課 ・庁舎管理課 ・庁舎整備課 ・施設整備第一課 ・施設整備第二課 ・オリ・パラ施設整備課

※詳細はこちら(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/tosei/soshikijoho/soshiki/zaimu.html)

 財務局には4つの部があり、それぞれの部は上記のとおり複数の課を抱えています。そしてここでは紹介しきれませんが、各課の中に、様々な係が存在しています。

3-2 イメージと現実はズレている?

 受験生がイメージする花形部署に合致しているのは、ほとんどの場合、東京都の予算編成を担当している2. 主計部になると思います。

 一方で、「4. 建築保全部って何する部なの?」「財務局にそんな部署があるの?」と思われる方が多いのではないでしょうか。(建築保全部の方ごめんなさい。)

 このように、一言で財務局といっても幅広い業務を所轄しており、予算編成を担当している部署はその中の一部門にすぎません

 つまり、電車内で都庁受験生や若手職員同士が、「財務局ってやっぱり花形部署だよね」「出世を目指すならやっぱり財務局だよね」という会話をしているのを聞いた都庁職員は、「それ財務局っていうより主計部の予算担当のことだから」とにんまりしているのです(笑)

 実際、都庁職員の中では、確かに2. 主計部は花形部署という印象がありますが、それ以外の部を花形部署とイメージする人はあまりいないのが現実です。

※あくまでイメージの話ですので、ご了承下さい。

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4 都庁職員が考える花形部署

 では、実際の都庁職員が花形部署をどう考えているのか、具体的に解説していきます。結論を先に言ってしまうと、「係単位で花形か否かを判断している」となります。

4-1 人事(ヒト)と金(カネ)が集まる部署

 都庁のみならず、役所の世界において最も権力が集中するのは、人事(ヒト)予算(カネ)を統括する部門です。これは断言できます。

 そしてどの局にも、人事(ヒト)と予算(カネ)を総括している部署があります。本庁にある、「人事係」や「経理係」といった名称であることが多く、これらの係はその局内の優秀な職員が配属される場合が多いです。

 つまり、局の中で人事や予算を総括・管理する係は、どの局であっても花形部署と見られているということになります。

 もちろん、各局には人事・予算以外の部署でも、花形部署に該当する部署は存在していますが、人事・予算を統括する部署は、都庁におけるすべての局で例外なく花形だと考えられています。

 それでは、もう少し具体的に花形部署のイメージについて見ていきましょう。

 次は、実際の職員の異動に際し、周りの職員から見られるイメージについて紹介します。  

4-2 異動先と都庁職員の評価

 主任試験に受かった同期の5年目職員(A君とBさん)がいます。この二人は次年度4月1日付で、局間異動をすることになりました。二人の異動先は、次のとおり決まりました。

※生々しい話になるため、部以下の名は伏せさせていただきます(笑)

A君:財務局の本庁の部に属する係(部内職員の出勤・給与を管理する係)

Bさん:水道局の本庁の部に属する係(局内の人事を総括・管理する係)

 都庁の実態を知らない受験生又は新入職員がこの話を聞いた場合、「A先輩は財務局の本庁勤務なんだ、花形部署への異動だから優秀なんだろうな」という印象を持つ方が多いです。一方、「B先輩は水道局異動か、ちょっと地味だな」という印象を持つ方が多いと思います。花形部署かどうかを、局名で判断するケースが多いということです。

 これに対し、概ね入都後3~4年目以降の本庁在籍職員がこの話を聞いた場合、「Bさんは局の人事総括の係に配属されたのか、流石だな」という印象を持つ方が多くなります。一方、Aさんについては、「A君は出勤・給与の管理担当なのか」という感じで、特に感想を持たれないというのが、リアルな所です。

 これは、たとえ花形部署の代表格である主計部であっても例外ではありません。主計部にも、実際に予算を編成する係のほか、職員の出勤や給与、研修などを担当する係があるからです。

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5 まとめ

 実際の職場の部や課、又は係名を把握していないと、少しイメージし辛かったかもしれません。

 都庁内部における花形部署かどうかは、「どこの局にいるか」又は「どこの部にいるか」ではなく、「何の仕事を担当する係に配属されたか」で判断される場合が極めて多いということが、今回お伝えしたかった内容です。

 さらにもう一歩踏み込むとするならば、同じ係においてですら、担当業務によって花形が否かが別れます。本庁の人事担当係を例にあげても、実際に人事配置を決定する業務に従事する職員と、職員の給与計算に従事する職員とでは、配属される職員に求められる能力が当然に異なります。あまり突っ込みすぎると関係者からお叱りを受けそうなので、これくらいにしておきます(笑)

 また、これは余談ですが、花形部署はどこか?という質問に対し、建設局や水道局、下水道局などのハード系の局を回答する受験生は実際少ないです。受験生からすると、全体的に事務系がメインの局の方が、ハード系の局よりも華やかな印象を持たれているようです。しかし、事務職の内部職員の異動の際に人気が高いのは、実はハード系の局だったりします。

 受験時には何の役にも立ちませんので、読み物としてお楽しみ下さい(笑)

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